【商いのヒント014】ネット発信、確かな品質あってこそ
西日本新聞に寄稿した中小企業支援に関するコラムです。
【商いのヒント エヌビズの支援事例から⑭】
事業者の皆さんと話をする中で強く感じるのが、「SNSなどインターネットを使えば集客ができる」と、思い込んでいる方の多さです。むしろパソコンやネットに不慣れな方ほど、こういった「幻想」を抱く傾向にあるように感じます。今回は、地域に根ざした商売を続けている創業16年目のペット美容室が、初挑戦のネット活用で成功した事例を紹介し、成否を分けるポイントをお伝えします。
ペット美容室「グーフィー」(福岡県直方市)の鯰井(なまずい)絵美さんと初めてお話ししたのは今年6月。医療の進歩でペットが高齢化する中、ネットを使った新規集客に挑戦してみたいという相談でした。
2006年に創業し、当初は顧客を増やすことができずに苦労したということですが、電話帳からの問い合わせに対応したり、顧客からの紹介の輪を広げたりすることで、徐々に経営が軌道に乗っていったそうです。
この16年間、継続して心掛けていたことは「勉強」だそうです。カットやシャンプーのトレンドから犬の特徴・病気など、仕事に関わる学びを怠らず、さらに顧客である飼い主の悩みや不安を丁寧に聞き出すことにも徹してきました。こうしてコツコツと地道な努力でサービス向上に努め続けたからこそ顧客を増やし続け、順調に事業を継続させることができたのでしょう。
その鯰井さんに当センターがご提案したのは、グーグルの地図検索での上位表示を狙う「マップエンジン最適化」の取り組みと、「インスタグラム」での情報発信です。どちらも奇をてらった取り組みではありません。しかし、長きにわたってサービスを磨き上げてきた実績があるからこそ、シンプルな方法で売上アップが実現すると考えたのです。
さっそく店の情報をアピールする「グーグルマイビジネス」とインスタグラムでの情報発信を開始。確かな技術を伝えるコンテンツは、すぐに反響を呼びました。開始から3カ月で新規顧客が23件も増えたと、うれしい報告をいただきました。「アナログ人間」という鯰井さんですが、「写真や情報をネットに掲載する作業が日増しに楽しくなっていきました。受注につながったのはもちろんうれしいですが、何より自分の仕事を振り返るいい機会になりました」と、にこやかに語ります。
小手先のマーケティングやSNSを駆使しても、中身のない商品・サービスでは、あっという間に消費者に見抜かれてしまいます。「誰にも負けない」と、胸を張って言い切ることのできる確かな品質を担保しているからこそ、飾りのない率直な情報発信が売り上げアップに効果を発揮するのです。
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