取締役と従業員の違い
企業の取締役の就業時間は特に定められていないことがほとんどだと思います。事業運営上の重い責任を負っている代わりに、どのように時間を使うかは本人に任されているのです。
早く帰るのは自由
ある自治体の副市長が夕方からパチンコをしていたと報道されていました。特別職なのだから、まだ明るい夕方からであろうが退庁した後に何をするかは自由のはず。こんなことがなぜ報道されるのか、私にはさっぱり意味がわかりません。
家業の代表取締役を務めていた時、その日の仕事を終えたと判断したら、さっさと帰ることにしていました。早いと夕方に退勤してしまい、近くをウォーキングすることもあれば、早く帰宅して息子と遊ぶこともありました。
また、日中にぽっかりと時間が空いた時は会社近くのジムへ行き、ひと泳ぎしてくることもありました。会社に来ているからといって机に張り付いていなければならないなんてことはなくて、やることさえやっていれば時間の使い方は自由だと考えていました。もちろん、こうした働き方をしていて特に問題が生じた事はありませんでした。
取締役は事業運営上の責任を負う立場です。責任を果たしているのであれば、基本的に何をどうするのも自由。出退勤の時間ももちろん自由です。反対に、取締役は(使用人兼務役員でなければ)労働者のように雇用契約で保護されることはなく、取締役会や株主総会の決議で簡単に退任を余儀なくされることもあり得ます。広い裁量権が与えられているかわりに、重い責任を負っていて手厚く保護もされない立場なのです。
従業員から出世して取締役に就いた場合、マインドの切替が必要です。雇われる立場で就いてきた役職とは性質が異なるものだということを、まずは認識しなくてはいけません。取締役は従業員の延長にある地位ではないのです。
取締役は24時間営業
仕事用の連絡が入る回線やSNSアカウントをプライベートと切り分けたがる人がいます。雇われる立場の人であればその気持ちはよくわかります。今時は会社が私用携帯へ業務連絡することは許されず、また個人のLINEアカウントに連絡をすることも避けるべきです。可能であれば、会社がスマホを支給するなど何らかの手段を講ずべきでしょう。
でも、私は家業で代表取締役を務めていたときに24時間いつでも連絡をつくようにしておかなければならない立場でした。こうした経験があると回線やアカウントを分けることにこだわりがなくなってしまいます。個人事業主として働いている今も回線は1つのみ。名刺にもiPhoneの電話番号を記載していて、顧問先にはいつでも連絡してもらって構わないとお伝えしています。雇われる立場の人であれば就業時間は決まっていますが、一国一城の主である個人事業主にオフタイムはありません。わざわざ回線やアカウントを分ける必要はなく、逆に1つにまとめることで身の回りをスッキリさせることができます。
代表取締役は24時間営業、その他の取締役は寝ている時間以外の18時間営業というのが私の持論。実際にかつて一緒に働いていた取締役メンバーにはそのように伝えていたこともあります。公私を分ける必要のない代表取締役にとって、スマホの2台持ちなど無駄なことです。
時間を切り売りしない働き方
地方中小企業と顧問や社外取締役として関わらせてもらっている今、私は時間を切り売りするような働き方を避けています。いわゆるタイムチャージというやつです。1時間稼働したからいくらというのではなく、顧問先には私と「つながる権利」を買ってもらっています。
もちろん、契約内容によって訪問日等は決めていますが、それも厳密なものではありません。何もトピックがなければ月に1回1時間だけ話すことがほとんどで、反対に何か集中してお話しする必要があれば、朝から晩までみっちりとディスカッションをすることもあります。時間を売っているのではなく、私とつながる権利を買ってもらっているのです。
独立開業して良かったと思うことはたくさんありますが、時間に拘束されないというのが一番のメリットであると感じます。提供する価値の良し悪しだけが判断されるわけで緊張感はありますが、ダラダラと無駄な時間を費やさずに済みます。雇われる立場の人のように、始業から終業まで忙しくなくても働いているふりをする必要などないのです。
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