地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

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コラム

地方中小企業の経営者は「数字」を苦手にしてはいけない

商売を営んでいるのであれば、どの商品がどれだけ売れて、どれだけ貢献してくれているかを把握するのは必須です。表面上の売上に惑わされずに利益率、利益額など貢献度を知っておかなければ実態を見失ってしまいます。

売上しか把握出来ていない経営者が多い

ある関与先でのこと。新事業に取り組み初めて1年が経過したそうで、これまでの利益(回収額)を尋ねたところ把握出来ていないとのことでした。びっくりです。レジ情報を元に売上は即座に集計できているようですが、どれだけの現金を生み出してくれているのか掴めていないのです。聞くと、専任の従業員もいるし、立ち上げ時には一定の設備投資もしている様子。POSレジアプリも導入しています。今後さらに大がかりな投資も予定しているとのことで、回収計画を立てるためにも利益構造を把握することは避けられません。ちょっとまずい状況かなと感じたので、私なりにいくつかのアドバイスをさせてもらいました。

またある飲食店の後継経営者が相談にいらした時のことです。売上を増やしたいということで私とお話ししていたのですが、メニュー毎の利益率は把握できていないと言います。ではどのようにして価格設定をしているのか大いに疑問ですが、そこは直感的に値付けをしてきたのでしょう。地域のファンも多い飲食店ですが、経営は苦しいということで私の所にいらっしゃいました。何をすればどれだけ利益が生まれるかを把握出来ていないので、経営がずさんになってしまうのは必然。この後継経営者にはまずは簿記3級レベルの知識を身につけることをお勧めしました。

こうした事業者に共通しているのは売上だけを気にして利益を把握できていないこと。つまり売りっぱなし状態になっているわけで、次の手を考えるための情報を取りに行こうとする思考が欠落しています。もちろん利益構造を把握することがゴールではなくて、利益を生み出して再投資し、成長を継続することが目標であるはず。表面上の売上しか把握できていないというのは、羅針盤なしで航海に出るようなもの。その恐ろしさに気付いてもらうよう気づきを提示するというのも中小企業支援家に時に求められる役割です。

簿記3級レベルの知識を身につけよう

地方中小企業の経営者とお話ししていると、ぞっとするほど財務の知識が無い人がいることに驚きます。そういう経営者に限って「数字は苦手だから」「財務は父に任せている」「銀行対応はしなくて良いと言われている」などと言います。

しかし、経営と数字は切り離せないもの。そもそも事業の実態を把握することもままならない状況で、私が売上アップを目指す知恵やアイデアを提示したところで意味はありません。「売れた」「売れなかった」と一喜一憂しても持続可能な事業を営むことは困難で、長く商売を続けたいのであれば財務の基礎的な知識は必須です。

こうした経営者に私が提案するのは簿記3級レベルの知識を身につけること。資格を取る必要なんかはなくて、簿記の勉強をすることでごく基礎的な知識を身につけて欲しいのです。

そもそも、例えば減価償却が何を意味するのかもわかっていない経営者には会社を率いる資格はありません。簿記3級といえば中学生でも合格できるレベルで、合格率は50%くらいと言います。経営のために必要な知識を身につけるためと思えば、決して高いハードルではありません。その程度の努力を惜しんでいるようであれば、経営者を交代したほうが良いというのが率直な考えです。

そろばん

数字が苦手ならば克服すれば良いだけのことです

つきつめれば資金繰りが回っていれば問題ない

経理・財務に関する資料で最も重要なのは資金繰り(予測)表だと思っています。お金が残っているのか残っていないのかを把握するには資金繰り(予測)表を見れば一目瞭然。私も家業の代表取締役を務めていた当時に、業績が悪化し続ける中で最も気にしていたのは資金繰り(予測)表でした。

もちろんお金が足りている、足りていないという情報を得たのであれば、次にどのような要因でそこに至っているのかを辿ることが必要です。そうして自分が必要とする情報を資料から得ていけば、経営の選択肢がどれだけ手元に残されているのかを把握できるはず。

事業を営むということは価値を提供して手元のお金を増やすこと。売上に一喜一憂したところで、どれだけのお金が手元に残るかが大事なのです。このあたり直感的に理解できない人には稲盛和夫の書いた「稲盛和夫の実学―経営と会計 」を読むことを勧めています。薄い文庫本なので誰にでも読めるはず。

地方中小企業の経営者でごく基礎的な数字を読み解けない人は非常に多いです。知らないことは恥ずかしいことではなく、知らないことを解消しようと動かないことが恥ずかしいことなのです。ぜひ一歩を踏み出して、ごく基礎的な知識を身につけてもらいたいです。


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