地方中小企業のハラスメント対応
社内でハラスメント事案が発生した際に
どのように対応すればよいのでしょうか。
事実関係を把握する
ある関与先での出来事です。
ハラスメント事案が発生したとのことですが、
いつ、どこで、誰が、何をした
というのがさっぱり要領を得ません。
「2週間くらい前に、、、」
「従業員Aが大声を出していたようだ、、、」
「その場にいた従業員Bが
会社を休んでいるのでまだ話せていない、、、」
といった感じで管理職がモゴモゴと話すのみ。
その後、経営者にも入ってもらい状況を確認しようとすると
経営者も日時や詳細を把握していないことがわかりました。
これでは次の対応を考えることができません。
ハラスメント事案が発生した際に、
まず真っ先にすべきことは事実関係を把握することです。
そもそも何が起こったのか。
誰もが起こって欲しくないと考えていた出来事が発生してしまうと
ついつい浮き足立ってしまうもの。
経営者や管理職が冷静に「事実」を押さえることが必要です。
・○月○日 ○時○分頃
・会議室Aにて
・従業員AがBに対し「〜」と大声を発した
・同席していたのはCとDとE
・Aの言い分
・Bの被害の申し立て内容
・CとDとEが見聞きしていた状況と内容
・被害を受けたBの現況
最低限、このような情報を把握し、
会社としてメモに残しましょう。
メモに残す
少人数で運営している地方中小企業に多いのが、
ハラスメント事案に限らず
事業運営上の出来事をメモに残そうとしないことです。
すべてを口頭のやり取りのみで済まそうとすると
第三者が後を追えなくなりますし、
時間の経過と共に記憶が薄れたり置き換わったりしてしまいます。
メールやチャットツールでも構いませんので、
会社として公式に使っている道具に記録を残すことが必要。
(もちろん押印した文書でも大丈夫)
記録を残さないということは
次に生かす資産が残らないということ。
過ちを繰り返さないためにも、成功体験を共有するためにも、
事業運営上の出来事を記録し、
後から振り返れるようにすることが必要です。
また特にハラスメント事案の場合は、
会社を守るためにも対応記録の存在は極めて重要です。
・どのような初動を行ったのか
・その際に誰がどのように動いたのか
・当事者からどのようなコメントがあったのか
こうした記録は手書きのメモでも構いませんので、
整理整頓して保存しておきましょう。
万一、事態がこじれてしまい、
第三者が間に入ることになった場合、
会社として対応すべきは対応していたと主張するためにも
当時の状況を記録したメモが役立ちます。
私は家業の代表取締役を務めていた時から現在まで、
手帳に毎日の行動記録を書いています。
いつ、どこで、誰と会ったのか
何かのトラブルに巻き込まれてしまった際に、
身を守る資料とするために記録し続けています。
被害者を断固として守る
ハラスメント事案への対応を何のために行うのか。
まず最優先は被害を受けた(であろう)人を守ることです。
地方中小企業は少人数で経営していることがほとんど。
不条理に被害を受けた従業員に対し、
会社がどのように対応しているかを
他の従業員は自分の身にも起こり得ることとして
じっと見守っています。
「加害者は部門責任者だから辞められたら困る」
「被害者がアルバイトだから事を大きくしたくない」
「この程度のことは昔は日常的に起きていた」
「被害者が弱いだけだ」
「事件が起きたことを他の従業員に知られたくない」
残念ながらこのような発想を持ってしまう、
地方中小企業の経営者がまだいます。
ハラスメント事案への対応を行う理由は
被害者にこれ以上の負担を強いないため。
そして同じようなトラブルを再発させないため。
加害者に処分を下すために行うものではありません。
この原理原則をまずは確認してほしいものです。
もちろん、
対応を進めて事実関係が明らかになった後に、
就業規則の懲戒規定に基づいて処分が発生することもあるでしょう。
しかし処分はあくまで最後のおまけ。
ハラスメント事案が発生してしまった
地方中小企業が断固として守るべきは、
被害者であって加害者や会社のメンツではありません。
経営者が「被害者を守る」と覚悟を持って対応しましょう。
ハラスメント事案への対応を間違うと、
従業員からの信頼を失い、
生産性を大きく低下させることになります。
また第三者が間に入ることになると
経済的な負担も発生することもあり得ます。
まずは事実関係を正確に押さえ、
記録をメモにして残し、
被害者を救済するために行動する。
地方中小企業にハラスメント事案が起きてしまったら、
ポイントを押さえて要領よく対処しましょう。
関連記事