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コラム

中小企業支援事例から学ぶべきこと

    事例ばかりを参考にしたがる経営者を「事例病」と呼んでいます。

    成功事例の横展開という安易な発想

    中小支援の知見共有、経産省が情報サイト – 日本経済新聞
    https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68817060X20C23A2EP0000/

    「事業を承継した直後の若手経営者や、新規ビジネスに取り組む経営者などへの支援事例を自治体や民間の支援担当者らに紹介する」そうです。経営者自身に読んでもらうことも想定しているとのこと。成功事例を横展開しよう、といったところでしょうか。

    実際に地方中小企業の経営に携わったことがある私としては、事業承継直後に知りたかったのは「踏んではいけない地雷の在処」でした。日本を代表するような大企業の創業者の言葉などからも当然学ぶべき事はあるのでしょうが、それよりも地方中小企業が明日を迎えるために必要なのは、絶対に避けなければいけないことを先に把握しておくことです。

    成功事例を辿ればみんなが成功するだろうというのはいかにも安直な発想で、同じ現場が一つと無い地方中小企業には、成功事例の使い回しなど成り立つ話ではありません。

    私が講演する時の支援事例の伝え方

    もちろん、事例を共有することが悪いことなのではありません。適切に共有できれば、他社事例から思考を逆算して、自社の取り組みに反映することができます。

    中小企業支援家として講演させてもらう際には、当然、支援事例も織り交ぜてお話しするようにしています。プロフィールや家業を事業譲渡した経緯もお話ししますが、最も反応があるのが支援事例の紹介です。

    90分の講演の場合は10事例くらいを用意しておき、実際にお話しするのは5事例前後。参加者のリストを眺めながら参考になりそうな事例をその場で取捨選択するようにしています。また事例を多めに用意しておくことで、時間調整をしやすくする狙いもあります。

    肝心なのは事例の表面をなぞるような説明をするのではなく、売上アップに繋がった本質の部分をお伝えすること。

    例えば、ある事例では相談者の「ECショップに挑戦して売上を増やしたい」という言葉に惑わされずに、眠っていた顧客名簿を活用してニュースレターを発信し、売上アップに繋げた経緯をお伝えしています。表面だけなぞるのであれば、ニュースレターの内容などを見せればよいのでしょうが、そうはしません。存在を忘れられていた顧客名簿の活用に取り組んだことに重きを置いて、お話しするわけです。

    コピー機

    事例をそのままコピーすることはできません

    事例の表面をなぞりたがる経営者

    ところで、事例を伝えると必ず現れるのが「事例病」の経営者です。よくあるのが質疑応答やアンケートでの「自社と同じ業界の事例を知りたかった」というコメント。

    どういうことかというと、私がお伝えした事例が自社の属する業界のものではなかったために、参考にすることができない、あるいはそのままコピーすることができないというのです。

    私はこうした経営者を「事例病」に冒されていると表現しています。事例の表面だけを見て、自社の経営にコピーできるところを探すばかりで、本質的な部分を自分なりに解釈し、自社に応用しようとする発想はありません。こうした経営者に事例をいくら提示しても、売上アップに結びつくことはないでしょう。なぜなら思考できないから。

    地方中小企業の経営者と成功事例(とされるもの)を共有するには注意が必要です。経営には勝利の方程式も魔法の杖もありません。他社の成功事例を紐解き、本質的な部分を見出し、自分なりに解釈して自社の経営に反映させる思考力と実行力が求められます。

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