中小企業支援の入口は経営者の思いを把握すること
私が経営者と話をする際に
いきなり財務の状況を確認することはありません。
まずは経営者が何に困っていて、
どうしたいのかを話してもらうことから始めます。
財務の知識は必須だが成功を約束しない
このような仕事をしていると
経営者としてスカウトされることがあります。
ご縁をいただけるのはありがたいことなので、
基本的にどのような案件でもまずはお話しすることにしています。
ある中小企業CEO案件の面談でのこと。
ファンドから派遣されているCFOが面接担当のようです。
公認会計士の資格を持っているそうで、
お互いの自己紹介を済ませた後は
財務的な知識を持っているかや、
家業の代表取締役を務めていた当時の財務諸表を
今でも覚えているかどうかの口頭試問が続きました。
話は特に盛り上がることなくそのまま終了。
後日、私からお断りさせてもらいました。
※たぶん先方も私は不採用と決めていたと思います
※過去の数字なんて精緻に記憶していません
お断りした理由は、
財務の知識にしか興味がないのであれば、
最初から公認会計士にでも声かけすれば良いのにと思ったから。
経営に勝利の方程式はなく、
魔法の杖もありません。
地道なドブ板営業を積み重ねて顧客名簿を作り、
顧客向けの確度の高い商品・サービスを提供するのが
アナログに思えますが、成功への近道でしょう。
財務の知識の有無だけが問われるならば、
世の中の経営者は公認会計士や税理士だけが務めればよいのです。
しかし現実は、彼ら彼女たちが経営者を務めたからといって、
それだけで成功が約束されるわけではありません。
私が投資ファンドに事業譲渡した家業は
その後、金融のプロや公認会計士が実質的に経営しているようです。
ところが業績は改善するどころか、かなりご苦労されていると聞きます。
経営に財務の知識は必須です。
しかし財務の知識が経営の成功を約束するわけではありません。
私がまず確認すること
私が個別相談を実施する際に
まず確認するのは
経営者がどうなりたいか、です。
具体的には
・何か手掛けたい事業があるのか
・その事業の成功した姿はどのようなものなのか
・経営者は将来どうなりたいのか
・何を考えていて、何に困っているのか
・何を求めていて、何は不要なのか
などを確認するところから始めるわけです。
いきなりカネの話をすることはありません。
・現預金はいくらありますか?
・純資産はいくらありますか?
・利益率は?人件費は?借入金は?
できない自称専門家ほど、
こうしたミクロなところから会話を始めてしまうように感じます。
中小企業支援家がまず把握すべきは、
ご支援の対象となる経営者が「どうなりたいのか」です。
それ以上でもそれ以下でもありません。
さらに言うと、
すべての経営者は「今より良くなりたい」と考えているわけで、
どのような未来を実現したいのかを共有することが
支援の入り口になります。
何かを押しつけるのが支援ではない
ある経営者とお話しした時のこと。
創業まもないベンチャー企業で
IT関連の事業を手掛けています。
率直に言って、
私にはその会社が保有している技術について
経営者と対等に話すだけの知識はありません。
にもかかわらず、
定期的に私との面談を希望してくれますし、
過去に関わった専門家よりも
私の方が使い物になると褒めてくださいます。
面談といっても
経営者が思考を整理するのに
私との会話を利用している感じです。
私が何かコンサルティングを行うことはありません。
毎回2時間程度、
ホワイトボードに思考の過程を書き連ね、
経営者も私もその間、立ちっぱなしで議論します。
何を伝えたいかというと、
経営者が求めているのは経営のあるべき論ではなく、
また、わかった振りをした技術論でもないということ。
経営者の思いを理解し、
その夢を実現するための選択肢を提示することが
中小企業支援家には求められています。
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