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商いのヒント

【商いのヒント024】「峠遠し」現状に安住せず

    西日本新聞に寄稿した中小企業支援に関するコラムです。


    【商いのヒント エヌビズの支援事例から24】

    この連載も最終回となりました。直鞍ビジネス支援センター(エヌビズ)での相談業務を終えた今、よく聞かれるのは「なぜ辞めるのか」「次は何をするのか」という質問です。

    元々、私は京都の茶わん屋です。江戸時代から続く家業を投資ファンドに事業譲渡し、直方市に来たという来歴は、連載の初めでもお伝えしました。あれから5年。人生の時間割を考えた時に、「この先どれだけ社会の役に立つことができるか」というのを強く意識するようになりました。

    ちょうど、この春は市外郭団体との雇用契約が満了するタイミングであり、また行政特有の文化へのかすかな違和感を抱き続けることにも少し疲れてしまいました。皆さんにごひいきにされる居心地の良い今の仕事にしがみつくのではなく、また別の場所で自分を成長させたいという思いが強くなり、契約更新を希望しないという判断に至りました。

    最後の相談業務となった1月31日も入れ代わり立ち代わり7人の事業者が相談に来られました。いつもと変わらない一日でしたが、新たな挑戦が生み出された日でもあります。

    例えば「商品のスペックだけを語らず、作り手の生きざまを前面に打ち出したECサイトを作ろう」「大手チェーン店と同じようにおいしさをPRするのではなく、地域貢献の姿勢を見せて消費者に選んでもらおう」といった話をしました。私のアイデアを踏み台にして、成果に結びつけてもらいたいです。

    私は商いの基礎を家業の「たち吉」から学びました。商売の世界から中小企業支援の世界に転身しても、事業者の期待に何とか応えることができたのは、先祖代々受け継がれてきた、「商いの心」を理解していたからだと自負しています。

    「峠遠し」とはたち吉の旧本社ビルに刻まれていた言葉です。今に安住することなく、この5年間に学んだことを新たな挑戦の場で生かし、商売人として成長したいと考えています。

    紙数が尽きました。ご利用いただいた多くの事業者の皆さんに深く御礼申し上げます。また事務担当として支えてくれた案納美江さん、ありがとうございました。そして5年間、仕事に集中する環境を与えてくれた妻と息子にも感謝します。

    西日本新聞連載商いのヒント「峠遠し 現状に安住せず」

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