【商いのヒント023】商売に奇策なし、「凡事徹底」こそ
西日本新聞に寄稿した中小企業支援に関するコラムです。
【商いのヒント エヌビズの支援事例から23】
「直鞍ビジネス支援センター」(エヌビズ)の壁一面に貼られた新聞や雑誌の記事。これらは何らかの形で当センターが支援した案件が取りあげられたものです。広告宣伝費のほとんど無い地方の中小企業などにとって、自社の取り組みが記事化されることは極めて大きなPRになります。
しかし、メディアに取りあげられること自体は事業の目的ではないでしょう。商売の原点は、商品やサービスを通して顧客の課題を解決し、その対価として適正な利益を得ることです。
来月末でのエヌビズ退任を前に改めてお伝えしたい重要なことがあります。多くの事業者は、これらの論点に目をつぶりがちであるように感じていますので、耳の痛い話かもしれませんがお付き合いください。
まず一つ目は「商品の品質」。商品やサービスの質を研ぎ澄ませることなくして、消費者に選ばれることはありません。
本連載で紹介したペット美容室「グーフィー」(直方市)のように、長年、顧客に満足してもらうための地道な努力を続けたからこそ、積極的に情報発信を始めた際に、魅力が消費者に届くのです。安易に売り方や見せ方の工夫に逃げず、商品の質を向上させ続けることが商売の大前提です。
二つ目は「営業」。商品を売るための地道な行動です。インターネット上に販売サイトを開設しただけで、世界中の消費者から購入されるなんてことはありません。楽して稼げる方法などないのです。
私も法人営業の経験がありますが、「門前払いは嫌」「頭を下げてまで商談したくない」と考えていては、いつまでも動き始めることはできません。同じく紹介した「フクモト工業」(鞍手町)では、自社サービスを導入してもらうため、全国を飛び回って数多くの受注に結びつけています。フットワークが軽く、能動的に動き続ける事業者が、売り上げという“果実”を得られるのです。
商売に奇策はありません。商品を妥協せず作り込み、しっかり営業を行う。まさに「凡事徹底」。当センターでは知恵とアイデアで売り上げアップを支援してきました。しかし、それも事業者の地道な努力があってこそなのです。
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