【商いのヒント017】新商品開発が会社にもたらした「前向きな変化」
西日本新聞に寄稿した中小企業支援に関するコラムです。
【商いのヒント エヌビズの支援事例から⑰】
今回紹介するのは、前回に続き株式会社「サイバネテック」(福岡県直方市)の取り組み事例です。新型コロナウイルス感染拡大を受け、二酸化炭素濃度測定器「CO2ロギングメーター」を初の一般消費者向け商品として開発した経緯、今後の展望などを専務取締役の笹岡亮さんに聞きます。
岡田 緊急事態宣言期間中も、歩みを止めず新商品開発に取り組まれました。初の一般向け商品ということで苦労もあったかと思います。
笹岡 測定器の画面構成や使い勝手は、子どもや高齢者にも分かりやすいものを目指しました。例えば、電源を入れるとすぐに利用できるようにしたほか、CO2の現在値を表示するだけでなく、測定結果をグラフ化して変化を分かりやすくしています。
岡田 顧客の声を商品の改良に反映していると聞きました。顧客との関係性を大事にしているからこそ実現できることですね。
笹岡 水分補給を促す機能を追加しようと実証試験をおこなっています。元々、二酸化炭素濃度の他に温度や湿度も測定しています。そのデータを用い、熱中症を防ぐための水分補給を促すアラームを表示できるようにしました。ある幼稚園では「園児が自発的に水筒の水を飲むようになった」と喜ばれました。
岡田 新しいプロジェクトを始めているということですが、どのような内容でしょうか?
笹岡 園児の送迎バスなどで心配される「置き去り検知システム」の開発に取り組み始めました。センサーなどを活用し、置き去りが疑われる状況があれば管理者に通知します。実際に発生した際には、車内から簡単な操作でアラームが送れるなど、少しでも事故の発生を防ぐようなシステムが開発できないか検討しています。
岡田 これまでは企業間取引に重点を置いていましたが、一般向け新規事業への挑戦は何か変化をもたらしましたか?
笹岡 以前から「地域での知名度向上」「若い人材の確保」といった課題がありました。新商品開発が新聞やテレビで取り上げられ、会社を多くの人に知ってもらえました。報道をきっかけの一つとして、念願の新入社員獲得にもつながりました。単に新しい商品を生み出しただけでなく、会社に前向きの変化をもたらすことができました。
蓄積してきた技術力で、「いつか自社商品を」という思いが常にありました。将来は製品開発委託と合わせて、より自主開発に力を入れていきたいです。
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