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商いのヒント

【商いのヒント016】アイデアがあれば、まずは形に

    西日本新聞に寄稿した中小企業支援に関するコラムです。


    【商いのヒント エヌビズの支援事例から⑯】

    コロナ禍で企業の姿勢が問われています。しばらく様子を見ながら歩みを止めるのか、新たな挑戦への機会と捉えるのか-。電子機器開発・製造委託の株式会社「サイバネテック」(福岡県直方市)の選択は後者でした。

    サイバネテック社が得意とするのは、工場の生産ライン用自動検査システムや、タッチパネル液晶表示機器などの設計・製作です。昨年初めて発令された緊急事態宣言期間中には、予定していた複数のプロジェクトが保留や再検討を余儀なくされました。

    危機に直面して専務取締役の笹岡亮さんが思い立ったのは、新規事業への挑戦でした。期せずして生じた空き時間。これまで手掛けてこなかった「一般消費者向け商品」の開発に当てることにしたのです。

    目指したのは、空中の二酸化炭素を測定する機器でした。人の呼吸によって排出される二酸化炭素の濃度を測定し、政府が推奨していた「3密回避」を実現しようと考えたのです。スイッチ一つで測定を開始、その数値を過去にさかのぼってグラフで確認できるなど、当時、販売されていた類似商品にはない工夫を加えました。

    こうして完成した新商品「CO2ロギングメーター」ですが、次なる課題は販路の開拓。「新商品を今後、どのように販売していけばよいか」という相談が当センターに持ちかけられたのは、2020年7月でした。

    提案したのは「使用する場面を具体的にイメージできるようなPRマーケティング」を展開することでした。まずは、市の子育て支援センターに設置してもらい、各種媒体宛てにプレスリリースを発信。これは新聞やテレビで大きく取り上げられることにつながり、初回に生産した130台はまもなく売り切れたそうです。

    購入した幼稚園からは「換気のタイミングがわかるようになって助かった」「園児が率先して換気するようになった」などの声が寄せられ、商品のさらなる改良に期待が寄せられています。

    笹岡さんは「アイデアがあれば、まずは何かしら形にすることが重要だと思います。一つ製品になることで新たな要望、課題も見えてきます。そうした経験は必ず自社の大きな財産になるはず」と、目を輝かせます。

    社長を務める父親からの事業承継を見据える笹岡さん。会社を大きく成長させる原動力となってきた製品開発委託事業に加えて、画期的な自社製品開発により、一般消費者に直接貢献していくことにも力を入れていこうと考えています。

    20211104西日本新聞16「アイデアがあれば、まずは形に」

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