【商いのヒント009】大切なのは準備とスタートダッシュ
西日本新聞に寄稿した中小企業支援に関するコラムです。
【商いのヒント エヌビズの支援事例から⑨】
今回ご紹介するのは、前回に続き「プラスアルファ」(直方市)の高嶋正治さんによる取り組み事例です。これまでの経歴とは全く関わりのない衣料品の新商品開発を手掛けました。ふくらはぎ部分にスマホポケットが付いた「スタジアムパンツ」を開発。ネット上でアイデアを披露し、広く出資を募るクラウドファンディング(CF)を2度行い、いずれも目標金額をはるかに上回りました。
岡田 スタジアムパンツのアイデアを相談した際はどんな心境でしたか? 当時はさっそく自身で試作したものを持参されましたよね。ありそうでない、斬新なアイデアだと感じたのを思い出します。
高嶋 実は「たぶん否定されるだろうな」と思っていました。これまでエンジニアをしたり、金融業界で働いたりしてきた私には、衣料品開発の知識が全くなかったからです。
岡田 慣れない縫製作業を繰り返すなど、試行錯誤されていた姿を覚えています。CFを実施した後は変化はありましたか?
高嶋 お客様から直接反応をいただけたことが、とても新鮮でした。部活の顧問をしている先生からは「右にスマホ、左にメモ帳を入れておき、必要な時にサッと格好良く取り出せて便利。他のパンツには無い特徴で一年中はいています」と感想をもらえました。また車をよく運転する方からは、荷物にまぎれてスマホを探すことが無くなったと教えてもらいました。
岡田 支援の現場にいると、CFについて「資金集めの安易な手段」と勘違いしている方が多いように感じます。何かアドバイスはありますか?
高嶋 大切なのは事前準備とスタートダッシュです。あらかじめ支援してくれそうな知り合いに可能な限り声掛けをしておくことで、開始と同時に購入してもらえます。また、そのことが注目を呼び、初見の方にプロジェクトのページを詳しく見てもらえるきっかけにもなります。
岡田 最後に、コロナ禍でも新しい事業や商品開発に挑戦される方がいます。高嶋さん自身は、どのような方針で取り組んだのか教えてください。
高嶋 新しい事業を思いついたとき、すぐにでも「試作品を作りたい」「規模は小さくてもサービスを始めたい」という気持ちになりました。起業には「失敗を恐れず、走りながら考える」という姿勢も必要です。しかし今回は畑違いの分野ということもあり、あらゆるリスクをコントロールしつつ、少しずつ認知を得ながら事業を進めるように心掛けました。今後は、環境に優しい生地や在庫ロスを生み出さない受注生産の仕組みを取り入れていきたいと考えています。
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