【商いのヒント006】どう生きるのか「創業は究極の自己実現」
西日本新聞に寄稿した中小企業支援に関するコラムです。
【商いのヒント エヌビズの支援事例から⑥】
今回は、直鞍ビジネス支援センターの利用者で「創業第1号」となった方への支援事例を紹介します。
当センターが2017年3月に相談業務を開始してすぐに、鞍手町の西田正則さんがいらっしゃいました。大手ハウスメーカーを退職したばかりで当時58歳。後進に道を譲るために早期退職したとのことです。
これまでの経歴を伺うと、生産管理から製造、品質管理まで幅広く経験。関連会社のプロパー従業員として初めて、工場長まで務めていたとのことでした。
特にトヨタ生産方式の実践やISO取得を推進するなど、生産現場での業務改善に豊富な知見をお持ちの様子でした。
そんな西田さんは創業を検討中。「どんな事業で創業をすれば良いか、一緒に考えてほしい」との依頼でした。通常、創業の相談は事業内容を決めてからお越しになるものではないでしょうか。しかし、ありがたいことに西田さんは、事業の内容を検討する段階から当センターを利用してくれました。
私から提案したのが、「上場企業子会社の元工場長が伝える業務改善」を打ち出した改善アドバイザーでの創業です。当初は宅地建物取引士の資格を生かした不動産業も検討しましたが、私からは西田さんの知見を最大限に生かした業種での創業を提案しました。
当センターは業務改善のニーズがあるであろう製造業の会社を紹介。開業早々に顧問契約を実現し、順調なスタートを切ることができました。
当時の様子を西田さんはこうおっしゃっています。「アドバイザーとしての実績も見込み客もいないのに創業するかどうか真剣に悩みました。センター長の熱意に押されて創業を決断し、その後は地域の中小企業とのご縁が広がっています」
その西田さんも創業5年目を迎え、誠実な人柄と素晴らしい実績は地域にしっかりと根差しています。今年から新たに中小企業大学校直方校にて、工場管理者養成コースでゼミナールを担当するとうれしい報告をいただいています。
私は利用者に「創業は究極の自己実現です」と伝えています。相談を受ける際には、制度の説明や事業計画の話をするだけではありません。何をしたいのか、どうなりたいのか、どこに幸せを感じるのか。そしてどう生きていきたいのか-。人生の大事な局面で相談してもらえているありがたさをかみしめて話を伺うようにしています。
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