【商いのヒント005】「地方の本物」で社会貢献を
西日本新聞に寄稿した中小企業支援に関するコラムです。
【商いのヒント エヌビズの支援事例から⑤】
前回ご紹介した「手染め加賀友禅マスク」は、全国から注文が殺到する大ヒット商品になりました。開発・販売を手掛けた北市漆器店(石川県加賀市)の北市博之社長と取り組み事例について振り返りました。
岡田 北市社長から「加賀友禅の技法を用いた布マスクを作った」と連絡が入ったのは1回目の緊急事態宣言が発令される直前でした。当時の心境はどのようなものでしたか?
北市 「自粛ムードのなかで何か社会貢献できないか。工芸品の販売をしている弊社であればマスクを作れるのではないか」という思いが始まりです。話を聞いてもらえるか不安でしたが、全国の困っている人たちに一日でも早くマスクを届けたいという一心で相談しました。
岡田 当時はどこの百貨店や実店舗でも品薄状態。ネットでマスクを販売するメーカーが増えていました。「作り手の思いを込めたプレスリリースの配信」を提案させていただきましたが、反響はいかがでしたか?
北市 発売後まもなく新聞6紙、テレビ、ラジオなどで取り上げられました。新聞に掲載された日は終日、秒単位でサイトに注文が入り続けたことを覚えています。これまでに約1万7千枚を販売しました。
岡田 当時、全国でもマスクを品切れにしなかったのは、非常に珍しいケースだったと聞いています。
北市 全国47都道府県、離島や医療従事者からも注文が入りました。お客様から「全国でここでしかマスクを販売していない」という話も聞き、大きな責任を感じました。沢山のお礼のメールだけでなく、手紙、電話もいただきました。
岡田 当センターを利用して良かった点はどのあたりでしょう。
北市 全国の困っている方に存在を知ってもらえたことです。急きょ開発したマスクですが、最適なPR方法が分からずにいました。相談していなかったら、このような大きな仕事はできなかったと思います。
岡田 そう言っていただけて光栄です。消費者が作り手の思いに共感できれば、購入に結びつくだけでなく満足度アップにもつながります。今後の展望があれば教えてください。
北市 これからもマスクは機能面やデザイン面などどんどん進化していきます。マスクをマイナスイメージではなく、楽しい気持ちで着用してほしい。他にはない伝統工芸を武器に「地方の本物」を発信し、社会貢献ができればと考えています。
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