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商いのヒント

【商いのヒント004】作り手の思いに共感してもらう

    西日本新聞に寄稿した中小企業支援に関するコラムです。


    【商いのヒント エヌビズの支援事例から④】

    私の前職は京都の茶わん屋でした。全国約60社の仕入れ先に商品を仕立ててもらい、百貨店やアウトレットで販売していました。今回ご紹介するのは、その前職でご縁のあった、ある仕入れ先との取り組み事例です。

    石川県加賀市で工芸品販売などを手掛ける「北市漆器店」(北市博之社長)から連絡が入ったのは昨年の3月末。新型コロナウイルス感染拡大による最初の緊急事態宣言が出される直前でした。全国でマスクの需要が高まり始めたタイミングです。かつての取引先であった私に「加賀友禅の染色技法を使った布マスクを作ったよ」と知らせてくれたのです。

    私が懸念したのは、当時、様々な工夫をしたマスクを販売するメーカーが増えていたことでした。せっかくの良い商品も知ってもらえなければ競合他社との間に埋もれてしまいます。急きょプレスリリースを作成し、PRをお手伝いすることとしました。

    プレスリリースには「手染め加賀友禅マスクを急きょ開発 伝統工芸の力でマスク不足解消に貢献したい!」などと記載。商品の性能や効用をしつこく語るのではなく、伝統工芸の技法を生かした「地方の本物」であること、マスク不足という「社会的な課題を解決したい」という北市社長の熱意を表現しました。

    反応は大きく、発売後まもなく新聞やテレビ、ラジオなどで取り上げられました。綿を素材に小さな花などの文様をあしらった商品は、自社のウェブサイトでの販売を中心に、これまで約1万枚以上を販売したとのこと。北市社長に多くの方が共感してくれた証しです。

    北市社長は「1日でも早く全国の困っている人たちに当社のマスクを届けたいと考え、何とかしたいと相談しました」と振り返ります。新聞に掲載された日は途切れることなく注文が入ったそうです。購入者からは、感謝の手紙も相次いだといいます。

    「商品やサービスの魅力を伝えて購買に結びつけたい」と考えるのであれば、サイズや仕様を伝えるだけでは不十分です。モノがあふれかえっている今、機能や品質が優れているだけでは選んでもらえないのです。真っ先に伝えるべきは、「誰がどんな思いを持って提供しようとしているのか」ということです。作り手の思いに共感してもらうことができれば購買に結びつくだけでなく、買い物の充足感を高めることも可能となります。

    西日本新聞 商いのヒント 作り手の思いに共感してもらう

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