地方中小企業の経営者に必要な経営の選択肢
今日は
地方中小企業の経営者に必要な経営の選択肢
について書いてみます。
商売の現場のリアル
仕事柄、ビジネス書をよく読むのですが、読み応えのある本はとても明解にまとめられています。
#一冊選べと言われれば「世界標準の経営戦略」
ビジネス書に書かれていることは程度の差はあるものの、いずれも役に立つことが多いです。ただ、実際に商売の現場で起きていることは「真っ先に挨拶に来なかったからあいつとは話さない」「現場を廻った際の服装が気に入らないからあそこの仕事は受けない」といった地味なことも多々あったりします。
どれだけ筋の良い取り組みで「時代の流れに合った三方良しの新サービスを開発した!」というようなことでも潰されてしまうことは普通にあるわけです。こういった生々しい商売の現場を経験している経営コンサルタントとしては、建前や理論ばかりを振りかざすのではなく、顧客に伝えるべきはきちんと伝えるようにしています。
顧客の立場になりきる
私と初めてお話しさせてもらう経営者には「魔法の杖(SNSとか)を用いて売上アップを実現したい」と期待されている方も多いです。そういった方と対話をしているとそもそも「商売の足腰の部分(顧客名簿の整備、商品やサービスの独自化、従業員との関係先構築など)」の詰めが甘い場合がほとんどです。
そのため「たとえばSNSを使ったからといって売上はすぐに増えません。地味に思うかもしれませんが、既存顧客に商売っ気なしのニュースレターを出しましょう。遠回りに見えますがこの方が目先の売上アップに繋がりますよ」などとお話しさせてもらうことがよくあります。
#関係性の構築が重要
昨年は「外壁塗装会社の塗料缶在庫管理システム」や「電子機器製造会社初のBtoC商品開発」のコンサルをさせてもらいました。
【商いのヒント010】無駄を省きながら新事業へ 効率化にとどまらないDX
【商いのヒント016】アイデアがあれば、まずは形に
このあたりが興味深いところで、私は塗装業界出身者でもなければ、電子機器開発業の技術者でもありません。ましてや塗料缶の主要メーカーも頭に思い浮かびませんし、電子部品が調達困難に陥りつつあることも肌感を持って感じることができないわけです。
しかしどの業種であったとしても売上アップのお手伝いは可能です。理由は心の底からその顧客の立場になりきれるから。そしてどの業種でも商売の原則は変わらないからです。
未来の選択肢を増やす
私の元に相談にいらっしゃる顧客の立場になりきると、自ずとインプットの質・量も、そして見ようとする世界も変わってきます。これまで関心を持たなかったような分野の新聞記事が目に留まったり、「こういった思いと歴史があって、資金繰りがこういう状況で、手持ちのカードはこれとこれで、、、」といった感じで相談者さんになりきるのです。
コロナ前と比べて「この先どうしようか?」と途方に暮れる方が増えていますし、しばらく減ることはなさそうです。
さらに経営者は「なぜ途方に暮れてしまうのか?」だろうかと考えを深めると、「(可視化されている)選択肢が少ないから」かもしれません。となると今から経営者が未来に対してできることは経営の選択肢を一つでも増やしておくことです。
私の場合は、元々、江戸時代から続く茶わん屋でした。家業の商売しかしていなければ獲得できる選択肢(相談対応の幅広さ=コンサル能力)には限界がありました。しかし、家業を離れたあとも行政の事業相談窓口で2,600件超のコンサル経験を積み重ねることができました。家業=食器業界の外の世界を知ることで、顧客にも提供できる「経営の選択肢」を潤沢に用意することできているのです。
まとめ
経営者の方には自社のプロジェクトだけでなく、他社のプロジェクトを自分ごととして応援することをお勧めしています。
経営者仲間のプロジェクトはもちろん、趣味や仕事以外の世界のプロジェクトでも構いません。自社の閉じられた世界だけでは体感できない問題に直面し、経営者としての足腰の強さに結びつく経営の選択肢の多様性を担保することが重要なのです。こうして獲得する選択肢が回り回って未来の自分を助けてくれることになります。