粉飾をしなかった経営者はこうなった
今朝の読売新聞に日経BP社の単行本「なぜ倒産 令和・粉飾編」の広告が出ていたそうで、何人か知り合いから連絡がありました。
なぜ倒産 令和・粉飾編
その単行本に収録されている、江戸時代から続く家業を投資ファンドに事業譲渡した話ですが、これは私が書いたものではなく、日経BP社の記者さんが書いてくれたものです。
取材のきっかけは、ある中小企業向け支援機関で私が行った講演です。事後のインタビューも含めて丁寧に取材してもらいました。その後、記事にまとまり、まずは日経トップリーダー2020年3,4月号に掲載。次に冒頭の単行本が2022年6月に発売。ほぼ同時に日経電子版のスキルアップ塾というコーナーで連載されました。
2015年3月に行った事業譲渡が7年経ってもコンテンツとして認めてもらえているのはありがたい限りです。私の家業での体験談が、地方中小企業の経営者のお役に立てればと願っています。経営者が求めているのは必ずしも成功事例ばかりを知ることではなく、逆に「踏んではいけない地雷」としての失敗談から学ぼうとしている方が多いように感じているからです。
取材内容をどのような記事にするかは記者の自由
さて、日経トップリーダーに記事が掲載されたときのことです。時系列を含めた事実関係の確認や、微妙な言葉の選び方について、丁寧に要望を受け付けてもらうことができました。このことは当時の私にとっては新鮮な出来事で、なぜならそれまで新聞記者さんから取材を受けた時には、掲載前に記事内容を確認できることなどまったくなかったからです。私へのインタビュー記事でも、掲載されるまでどのようなニュアンスの記事になるかわからなかったくらいです。
事業者さんがプレスリリースを発信しようとしている際にお伝えしているのが、まさにその掲載内容を自由にコントロールできるものではないということ。取材内容をどのように記事にするかは記者さんの自由です。特に新聞の場合は事前に内容を確認できる機会はほぼありませんし、掲載時期ですら事前に教えてもらえないこともあります。そのあたりのリスクも理解してもらった上で、取材を受ける心構えが必要ということです。
粉飾をしなかった経営者はこうなった
話は冒頭の単行本「なぜ倒産 令和・粉飾編」に戻ります。副題に「令和・粉飾編」とあるので、日経BP社から発刊直前にタイトルを教えてもらった時にはがっかりしてしまいました。というのは家業は粉飾決算などはおこなわず、逆に地域の金融機関に応援してもらえたからこそ、事業を存続させることができたからです。以前に日経トップリーダーに取り上げられた記事の再録だからと、細かいところまで確認しなかった自分を責めました。
ただし、その後、ご担当者から連絡があり以下のような内容でした。
『粉飾をしてしまうと、
正しい現状分析ができないのはもちろん、
破綻後の再生が、企業としても、経営者個人としても難しくなります。
そのことを読者のみなさまに、深くご理解いただくために、
この本で唯一、実名で当時のことをお話しいただき、
新しい人生を前向きに切り開いている岡田様の事例を、
「粉飾しなかった経営者はこうなった」という形で、
本の最後に、冒頭のケースと対比する形で置きました。』
なるほど、そういう趣旨で家業の事例を選んでもらえたのならありがたいことです。それでもタイトルしか読まない方には誤解されてしまうのが残念ですが。
家業を畳んだ経験は決して誇れるものではありません。しかし、現役の経営者のお役に立てるならばと思って講演でお話ししたり、このように原稿にしてもらっています。もしご興味があれば読んでください。
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