壁一面の新聞記事が物語ること
私の事務所では壁一面に新聞記事を貼っています。これらはすべて私が手掛けた支援事例です。
メディア掲載が支援の目的ではありませんが、広告宣伝費のほとんど無い地方中小企業にとっては、自社の取り組みが大きく取り上げられることは、極めて大きな効果を生み出すことに繋がります。
特に狙い目なのは地方新聞の地方面。新聞の発行部数が右肩下がりを続けていると叫ばれますが、地域に根ざした記事を掲載し続けている地方新聞の地方面は、今でも多くの人の目に触れています。地方面しか目を通さないという人もいるくらいです。
チラシをポスティングして期待される反応率は一般に0.1%、つまり1,000世帯に配布し1件の問い合わせに繋がれば成功とされています。それもあくまで「問い合わせ」であって、必ずしも成約に発展するとは限りません。印刷代や人件費の掛かるポスティングの効率と比べると、実質コストゼロで新聞に取り上げられる効果が現在でも侮れないことは容易に想像できます。
いくつか実際に取り上げられた記事の見出しをご紹介しましょう。
「障がい者就労 菓子店人気」
(菓子店オープン時の記事)
「換気促す機器 中学校で実験」
(電子機器開発会社の新商品を紹介する記事)
「芸術家5人 青少年にアート授業」
(地域のアーティストの展示会開催を予告する記事)
「みそ作りで若者、定住へ」
(地域おこし協力隊が任期後に創業した記事)
「エアコンクリーニング代、一部寄付」
(清掃会社が寄付活動を始めた記事)
このように私はメディアを通じた情報発信を積極的におこなっています。せっかく生み出した商品やサービスも、多くの方に知ってもらえなければ売上アップには繋がりません。新聞やテレビに取り上げられれば、それだけで集客や売り上げに直結します。
ただし、PRをおこなおうとしても、セールス色の強い発信が記者の関心を呼ぶことはありません。単なる商品の宣伝は、メディアが発信する記事として成立しないからです。「新商品を発売開始しました」「新しいサービスを始めました」といっただけでは、読者に対して価値のある情報とは見做されないのです。
ではどんな要素を掛け合わせれば、情報に価値が付加され、メディアに取り上げられるのか。それは「社会性」です。
例えば、「学習塾が学びの機会を確保するためにボランティアで指導をおこなった」「美容室が経済的に困窮している家庭の子どものために無料で前髪カットをおこなった」という具合です。同じ事業者が「夏期講習の生徒を募集しています」「前髪カットを○○○円で提供しています」と言うとそれは単なる宣伝。社会的に価値のある情報かというとかなり疑問です。
このように商品やサービスに社会貢献の要素を付加することで、メディアに取り上げられやすくなることはもちろん、消費者も安心感や信頼感を抱いてくれます。繰り返しますが、メディアに取り上げられることが目的なのではなく、その結果、消費者に自社について知ってもらうこと・関心を持ってもらうことが目的です。
消費者が何より嫌うことは「押し売り」です。メディアに取り上げられるような商品やサービスに仕立てることで、消費者にはセールス色の薄い社会性のある取り組みだと認知されます。それはつまりセールス色の強い競合と比べられた場合に、自社が選ばれる確率が高まることを意味します。