地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

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コラム

社史を残しているか

    創業時にどういった出来事があったか、
    戦火や災害をどのように克服してきたか。
    地方中小企業の社史は重要な資料です。

    社史から学べること

    中小企業にとって、
    今日も事業が存続していることは当たり前のことです。

    一方、
    昨日までの過去は当たり前ではなくて、
    先人達の試行錯誤があって成り立っています。

    そこには資金繰りの危機もあったかもしれませんし、
    なんらかの不祥事を
    乗り越えてきたこともあるかもしれません。

    「老舗と言われる企業は、
    しなやかに変化し続けた結果、存続できている」
    とはよく言われることです。

    これはすべての地方中小企業に当てはまることです。

    社史はありますかと尋ねると、
    「うちは創業十数年だから老舗ではない」
    「創業者がまだ第一線にいるから必要ない」
    とおっしゃる方がいますが、
    いずれの企業も過去を振り返れば、
    歴史が積み重なって今があるのです。

    何が言いたいかというと、
    地方中小企業にも社史は必要です。

    歴史がまだ浅いと思っていたとしても、
    創業者がまだバリバリ働いていたとしても、
    過去の歴史を残しておけば、
    それは必ず後進にとって重要な資料になります。

    江戸時代から続く家業に残る資料

    私の家業の場合は、
    戦前の資料はほとんど残っていませんでした。

    創業者の塚本長九郎が、
    どのような思いで創業したのか、
    なにを教訓として残したかったのかは、
    残念ながら知ることはできません。

    しかし、
    戦後まもなく事業を法人化した後の道のりは、
    ある役員OBが残してくれた資料で
    後を辿ることができます。

    「戦争中は休業し、戦後の昭和21年に店舗を再開した”茶わん屋たち吉”が、会社組織(資本金100万円)になったのは昭和24年(1949)5月であった」

    という書き出しから始まるこの資料は、
    「社史でつづる”茶わんや思い出ばなし”」と題されています。

    年表のイメージ画像

    過去から学べることはたくさんあります

    社史から学べること

    私にとって貴重な内容だったのは、
    ・それまでの積み上げ式陳列を止め、陳列演出を始めた
    ・ノベルティ商品を取り扱い始めた
    ・頒布会形式の販売を始めた
    ことなどの経緯をそれぞれ知ることができる点です。

    全盛期の家業だけ見れば、
    全国各地の百貨店に数多く出店し、
    中元や歳暮などのギフトで利益を稼ぎ出していました。

    しかし、
    そこに至るまでの過程では、
    京都の地方中小企業なりに、
    新しいビジネスモデルを模索し続けていたのです。

    これは言い訳ですが、
    私が代表取締役に就任した時点では、
    すでに資金繰りに窮しており、
    実質的に銀行管理下にありました。

    そのため、これまでの百貨店中心の事業構造から
    ビジネスモデルを転換するような、
    一定の資金を必要とする挑戦をすることはできませんでした。

    例えば
    京野菜を自社で栽培して販売する
    コメや味噌など基礎的な食品を販売する
    というようなアイデアはあったのですが、、、。

    こういったアイデアが思い浮かんだのも、
    この社史があったからです。

    社史の最後はこう結ばれています。

    「どんな時代になっても”発想の転換と創意工夫””余所より先を読む””常に市場(消費志向)を知る”などは、昔からたち吉商法の基本原点であり、これは今後も不変のものだろうと思う」

    地方中小企業の創業者や、
    創業者の熱量を近くで知ることができる方に伝えたいのは
    ぜひ社史を残してもらいたいということです。

    会社の歩んできた道のりを後進に伝えることは、
    単に感傷的な取り組みではなく、
    未来に繋がる貴重な糧となることなのです。

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