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コラム

家業を倒産させた直後の想定。そのとおりだったこと・そうでなかったこと。

    江戸時代から続く家業を投資ファンドに事業譲渡し、創業家が代々継いできた経営者の役割を終えました。2015年3月31日のことです。

    その時を境に自分を育ててもらってきた家業から離れ、第二の社会人人生を歩むことになりました。

    家業を離れるときに想定していたことはなんだったのか、それが実際にはどうだったのか。家業を倒産させた元経営者に起こったことを書いてみます。

    元従業員から糾弾されるのではないかという不安

    →そんなことは起こらず、今でも一部の元従業員さんとは交流が続いていて、ありがたいことだと思っています。

    事業譲渡直前に実施した従業員向けの説明会は、紛糾することも覚悟していましたが、皆さん丁寧に話を聴いてくれました。事後に感想を聞いたところ「最悪の着地(資金繰り破綻)を避けてくれて感謝している」とまで言ってもらえました。

    次の仕事が見つからないのではないかという不安

    →幸い、第二の社会人人生を歩めています。

    2017年1月から2022年3月まで、福岡県のある地方自治体が設置した事業相談窓口の責任者を務めました。この間、のべ2,600件以上の個別相談を実施し、多くの売上アップ事例を生み出すことができました。

    例えば2018年12月には支援事例が経済産業省主催の「女性起業家支援コンテスト」で個別支援部門優秀賞を受賞。支援される側から支援する側への転身が実現しました。現在は顧問先への経営コンサルティングを行っているのと、大学連携型起業家育成施設のチーフインキュベーションマネージャーを務めています。

    資格があればなんとかなるのではないかという楽観

    →資格は直接的な役には立ちませんでした。

    代表取締役を退任して間も無く、社会保険労務士事務所を開業しましたが、それだけで仕事を得られることはありませんでした。

    市場にはすでに多くの先輩方が社会保険労務士事務所を運営しています。実務経験のない者が看板を掲げたからといって、それだけで業務を受注できることはありません。

    ただし、開業後しばらくしてから、ボランティアで障害年金セミナーを始め、多くの就労支援施設と関係性を構築しました。このあたりの経験はその後の経営コンサルティングを行う際の思考に役立っています。

    会社を倒産させた者として後ろ指を指される不安

    →特に影響はありませんでした。

    社会で肩身の狭い思いをしなくてはならないのかとも覚悟していましたが、実際はその反対に応援してくれる方が増えました。

    そのきっかけは日経ビジネス「敗軍の将、兵を語る」という連載で取り上げてもらったことです。家業を整理した体験を率直にお話ししたところ、大きな反響がありました。キラキラとした成功体験ばかりが目につく世の中で、私のようにストレートに失敗談を話すのは珍しいようです。

    日経ビジネス_敗軍の将、兵を語る

    日経ビジネス「敗軍の将、兵を語る」

    金融機関からの信用が失われる不安

    →家業を倒産させたことによる悪影響はありませんでした。

    代表取締役を退任する際に自己破産は求められませんでしたが、しかし、金融機関に一定の迷惑は掛けてしまっています。金融的な信用がどうなるのか不安でしたが、社労士事務所(個人事業)を立ち上げる際に日本政策金融公庫から創業融資は受けられましたし、その後に自動車ローンも審査が通りました。

    きちんと整理しておけば、金融機関からの信用は大きく毀損することはなかったと体感しています。

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