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コラム

江戸時代から続く家業を事業譲渡した経験をどのように伝えるか

    私が事業承継に関する講演でどのようなお話をしているか、
    以前に機会をいただいた際の資料からご紹介します。

    https://www.isico.or.jp/i-maga/journal/i111150450.html

    企業の存続にはしなやかな変化が必要 早めに専門機関に相談を

    公益財団法人石川県産業創出支援機構(ISICO)は2020年11月6日、県地場産業振興センターで「事業承継セミナー」を開催しました。江戸時代から続く和食器販売の 老舗「たち吉」を投資ファンドに譲渡した創業家出身の最後の経営者、岡田高幸氏が講演したほか、県内3社の女性 経営者がパネルディスカッションで事業を引き継いだ経験談を話しました。その内容をダイジェストで紹介します。

    【基調講演】江戸時代から続く、家業の事業譲渡
    【講師】岡田 高幸氏

    ISICO機関誌

    講演後にこのような資料をいただけるとうれしいです

    社長交代が支援の条件

    たち吉は平たく言えば京都の茶碗屋です。創業は 1752 年にさかのぼります。飛躍したきっかけは戦後、法人化して全国の百貨店に売り場を持ったことでした。しかし、その百貨店の売り上げ が 1991年をピークに不振に陥ると、たち吉の業績も悪化の一途をたどりました。その後、7回にわたって早期退職者を募り、そのたびに割増退職金の原資を金融機関から借り入れたことも経営を圧迫しました。

    2001年に入社した私が、父に代わって社長に就いたのは 2010年6月です。代替わりは金融機関の要望でした。父が社長のままでは支援の継続は難しいと金融機関から遠回しに意思表示されたのです。係長になって数カ月の 私でしたが、断れば支援を打ち切られ、商売が続けられませんから、断るという選択肢はありませんでした。

    計画未達で譲渡を決断

    金融機関からは支援の継続に向け、事業再生計画の策定を求められました。策定に当たっては金融機関が推薦するコンサルティング会社との協力が必須でした。

    数千万円の投資を余儀なくされましたが、このときは良い計画を作ることができませんでした。

    続いて2012年5月、地元の金融機関が紹介してくれたコンサルティング会社とともに再度、事業再生計画を策定しました。今度は計画自体はよかったものの売り上げが下げ止まらず、2014年3月期決算が計画未達の見通しとなった時点で、外部資金の導入を決断しました。 

    当時のたち吉にとって最も重要だったのは、仕入れ先には1円の迷惑もかけないということでした。というのも、たち吉は自社で製造せず、全国各地のメーカーや窯元に作ってもらった品物を販売していたからです。社員はこれまで何度も早期退職者を募ってきた経緯を考慮し、優先順位を2 番目にしました。

    承継は第二会社方式で

    2014年1月から半年かけて、自主再建を諦めて外部資金を導入することを金融機関に説明し、内諾を得ました。7月からは地元の金融機関、仲介会社とともにスポンサー探しを始め、10月には国内投資ファンドに内定しました。11月に臨時取締役会で譲渡を決定後、翌年2月に従業員向けの説明会を開き、3月末に事業承継を完了しました。承継は第二会社方式で進め、茶碗屋としての事業のみを投資ファンドにお渡しし、負債のある旧たち吉は特別精算しました。

    業績が悪いながらも譲渡できた理由としては、まず私個人と身内で2/3を超える株を所有していたことが挙げられます。金融機関や社員が最後まで支え続けてくれたことも大きな要因です。また、伝統的に財務管理がしっかりしており、これも信用につながりました。

    古いものにしがみつくのでなく、しなやかに変化し続けているからこそ、京都には良い会社が残っていると言われます。岡田家がたち吉を存続できなかったのは景気のいい時期にしなやかに変化できなかったからです。会 社は変化し続けるのが当たり前です。皆さんも事業承継を考えているならば、ぜひ早めに ISICO に相談してください。

     

     

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