緊張するかしないか
人は緊張するものです。我を失ってしまった人へ「落ち着いて!」などと声掛けしても手遅れです。
「落ち着いて」は効果なし
今朝の日本経済新聞の連載小説で、主人公の1人がある人物へ「落ち着いて」と呼びかける場面がありました。落ち着けと言って誰もが落ち着くのならば、これだけ効果的な声かけはないでしょう。しかしほとんどの場合、頭が真っ白になっている人にどんな声かけをしたところで、よほどのことがない限り緊張状態が解消される事はないでしょう。
例えば人前で話そうとしていて、いかにも頭が真っ白になってしまっている人を見かけたら、もはや手遅れ。そこから挽回して上手に話することなどほとんど考えられません。「落ち着いて」と声掛けしなければいけない時点で、どうにもならないのです
同じような状況で「リラックスして」と言う声かけもあります。これも同様。部活の先輩で緊張しがちな人がいましたが、あるレースの直前に例によってとても緊張していました。こうなってしまうと終わり。どう声掛けしても緊張状態が解消される事はありませんでした。人間なんてそんなものなのです。
緊張している自分を認める
私は自分が緊張している時、あるいは頭が真っ白になりかけているときには、心の中で「今、自分は緊張しているな」と言い聞かせるようにしています。無理に緊張状態を解消しようなどと悪あがきすることなく、あるがままの自分の状態を受け入れるしかないと開き直るようにしています。
今度の金曜日に人前で話す仕事があります。また来月の頭にも、同じように地域の経営者さん達の前で江戸時代から続く家業を投資ファンドへ事業譲渡した経験をお話しすることにしています。年に数回もこうした機会は無いので、頭が真っ白になるような事は無いものの、毎回それなりに緊張します。
特に緊張するのが、話し始めの数分間です。どんな雰囲気の会場なのか、どんな人たちが聞いてくれているのか、あるいは聞こうとしていないのか。話しながら、そんなことをつい考えてしまうと毎回少し緊張してしまうのです。この時心がけているのは自分は緊張していると受け入れ、上手に話さなければならないとか考えないようにするのです。そもそも、私の話し方はボソボソとした話し方で、声も大きくはありません。どうせうまく話せないのですから、自ら期待値を高める必要などないのです。
そう考え出すと不思議なもので、心は落ち着いていきます。自己紹介を終えて本編に入るころにはいつもの調子で(ボソボソと)話すことができるようになります。
練習あるのみ
人前で上手に話すには練習回数をこなすしかありません。最初から思うように話せる人なんかいなくて、準備をし尽くした人だけが満足なパフォーマンスを発揮できるのです。
私の講演も同じ。いつも話しているコンテンツだからと油断していると空回りしてしまい、何度もブツブツと呟いて練習を重ねた後に人前に立つとそれなりに話すことができます。ある意味、練習した分だけ成果が実感できるのでわかりやすいです。
ビジネスプランコンテストへ応募した、創業を志す人をお手伝いしたことがあります。まず、応募書類は書きたいことを書き散らかすのではなくて、主催者が尋ねていることへ正面から答えるように伝えます。多くの人が募集要項を読み込まないままに応募書類を書き始めてしまうので、まずは募集要項に書かれている主催者からの「ヒント」を見つけるように促しています。
次にプレゼンの練習は、最初から本番同様に通して練習してもらいます。どんなに準備不足であったり、スライドが未完成であったりしても時間いっぱい話してもらうのです。「まだスライドができていないのでここまで」というのは無し。スパルタですが最初に思い切り恥をかいてもらい、練習を重ねていくのです。
こうして練習していくとまず全員が見事なプレゼンを時間ぴったりに収めてできるようになります。プレゼンは中身も大事ですが、話しぶりや時間の使い方も審査の対象になるもの。練習を重ねた分だけ評価されるようになります。
さて、私も金曜日に向けて練習しなければなりません。いつものスライドだからと油断していると、頭が真っ白になってしまうかもしれません。
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