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コラム

士業マーケティング ゆでガエル状態になるのを避ける

士業にも変わり続ける勇気が必要です。

ある顧問先で話したこと

先日、ある顧問先の経営者とお話ししました。事業を取り巻く環境を尋ねたところ、主力事業が成長する可能性はゼロであると明言されました。つまり、このまま放置しておけば会社が存続できなくなると分かっているのです。にもかかわらず、次の事業を育てる行動が伴っていません。従業員と共に目先の業務に注力し、働いた気になってしまっているのです。会社を存続させるために未来の事業の種を蒔くのは経営者の重要な仕事。従業員と同じレベルで日常業務に没頭していては、高い報酬をいただいている意味がありません。

この経営者へは「ゆでガエル状態に陥らないように」とお伝えしました。事業環境がゆっくりと悪化し、危機に気づかないまま手遅れになる状態を指す比喩です。現在の主力事業に未来がないと分かっているのに手を打たないのは、まさにゆでガエル状態。すでに手遅れかもしれませんが、新しい挑戦を一刻も早く始めるように促しました。

かつての家業を投資ファンドへ事業譲渡せざるを得なくなった最大の要因は、変化し続ける気概を失ってしまったことにあると考えています。当時の主力事業の成功体験があまりに大きかったため、次の事業へ挑戦する必要性を見失ったのです。私自身にこうした経験があるからこそ、顧問先の経営者へは煙たがられようとも、10年後の会社を想像して行動するように促しています。

一国一城の主だからこそ気を付ける

士業も同じ。顧問先の経営者や従業員から「先生」と持ち上げられる立場だからこそ、ゆでガエル状態に陥りやすいのです。かつては紙ベースでの手続きだったものが、現在では電子申請が主流になりつつあります。そのうちにHRテックがさらに進化し、AIを用いた省力化・自動化が進むのは間違いありません。その時でも顧問先に必要とされる存在でいられるかどうか。言い換えるなら、未来でも通用する価値を持ち合わせているかどうか。もしそうした未来に自分が適合できないと考えるのであれば、今すぐに新しい価値を身につける努力を始めなければいけません。不都合な未来がやってくるのが分かっているのに、何もしないままでいたら、いずれ食いはぐれることになってしまいます。士業もしなやかに変わり続ける者だけが顧問先に必要とされるのです。

私は社会保険労務士の資格を持っていますが、いわゆる定型業務は一切手がけないことにしています。多くの先達がいる業界で、実務経験に乏しい私が付け焼き刃でこうした業務を手がけても見込客に選ばれないことが分かっていたからです。何も考えなければ、実務セミナーに通って定型業務の知識を身につけようとしていたかもしれません。その方が楽ですから。「社会保険労務士は顧問先の手続き業務を代行するものだ」という世間の常識に従って生きていくのは、その瞬間に限れば波風が立たない思考だからです。

しかし士業といえども一国一城の主。不確かな未来を自分なりに予測し、将来に向かって価値を提供できるように立ち回らなければなりません。ましてや不都合な未来がやってくると分かっているのであれば、ゆでガエル状態になるのを避け、居心地の良い現在地から脱出する行動が必要です。

鍋のお湯が沸騰している様子

カエルを茹でてはいけません

秋から働き方が変わる

秋から商売の現場に戻ることになりました。8年半、中小企業支援の現場で働いてきましたが、そろそろ商売の現場に戻らないと勘が鈍ってしまうように思っていたのです。この業界の専門家らしき人々を眺めていると、経営経験もないのに経営者に偉そうな態度を取る人や、支援機関の職員に過ぎないのにコンサルを気取っている人が目に付きます。私もそのうちそうした人々に毒されてしまうような恐怖感があり、まだ通用するうちに商売の現場へ戻ることを決めました。

一方で今の環境はとても快適です。多くの顧問先や関与先の経営者に贔屓にしていただいていますし、これまでの支援事例も豊富で、それなりの立ち位置を築くことができています。今のまま働いていても、しばらくはこの穏やかな環境下で稼ぐことが可能でしょう。しかし、視線を5年後や10年後に向けると考えは変わります。今年48歳になった私の中小企業支援家としてのピークは今なのかもしれない、と。

そう考えると答えは明白。後ろ髪を引かれる思いがあったとしても、商売の現場に戻るという決断は必然でした。快適な現在地に留まっていては、自分がゆでガエル状態になってしまうだけ。中小企業支援家にも、変わり続ける勇気が必要なのです。

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