士業マーケティング 3つの勇気を持つ

雇われる立場であった人が独立開業して士業事務所を営むのであれば、3つの勇気が必要だと考えています。
自己開示する勇気
士業には同じ資格を持つ競合が全国に数万人も存在しています。つまり、数万人の競合の中から、見込客に選んでもらえるような仕掛けを用意しなければなりません。まず着手すべきは知ってもらうための情報発信です。自分が何者であるか、どんなことを考えているのか、どんな姿勢で仕事をしているのかなどを伝える努力が必要。ひと言で表現すれば自己開示です。
自己開示というと「顔写真を公開するのは恥ずかしい」「個人情報をさらけ出したくない」「変な人につきまとわれたらどうしよう」などと考えてしまいがちですが、そうしたデメリットを適切に管理しつつ発信すれば問題は起こりません。私は10年以上徹底して自己開示をしていますが、これまでに嫌な思いをしたことはゼロ。逆に自己開示をする勇気を持つことで、充実した第二の社会人人生を歩むことができています。
自己開示にならない発信をしたところで選ばれる理由にはなりません。例えば、法改正情報などを垂れ流すだけでは競合も同じような発信をしているので、独自の立ち位置を築くことには繋がらないのです。
自分が何者であるのか自ら語るのには勇気が必要です。でもいつまでも勉強し続けたところで顧問先は増えず、売上も得られません。資格を取得し、独立開業した後に必要なのはまずは自分を知ってもらうことです。
顧客に媚びない勇気
士業は顧客へ無形のサービスを提供して報酬を得ます。この時、顧客と士業は対等の立場にいるはず。顧客へ必要以上に頭を下げたり、自分を卑下したりするような行動は適切な振る舞いではありません。カネを払ってくれているからといって、媚びる必要はないのです。
ペコペコと頭を下げたり、何かを安請け合いしたりするのは簡単です。ただしいつか必ず自分の首を絞めることに繋がります。顧客に媚びない勇気を持ち、堂々と顧問先の経営者と渡り合いましょう。
ある支援者は経営者の顔色ばかりを窺っていて、経営者が発する言葉を真に受け、その要望に応えることだけに徹していました。私からしたら本質からずれた対応をしていることもしばしばで、危なっかしく見えたものです。案の定、顧客の満足度が上がることは無く、専門家としての評価も低いまま。相手に媚び続けたからといって、評価に結びつくとは限らないのです。

3つの勇気を持ちましょう
撤退する勇気
士業事務所を経営しているのですから士業も立派な経営者です。投下した資本を回収し、増やしていくことが求められます。仮に資本を溶かしてしまったら、いつかは市場から退場しなくてはいけません。この時、撤退ラインを定めておかないと泥沼にはまり込むことになります。返せるあてのない借り入れを増やしてしまったり、廃業を避け続けて次の社会人人生を切り開く機会を逃してしまったりするのです。
独立開業した事業に見切りをつけるというのは勇気のいることです。応援してくれた人の期待に応えられなかった負い目を感じることになりますし、もちろん生活の維持にも直結する決断となります。でも世の中は成功事例ばかりが目立ちますが、同じ数以上の失敗事例も存在しています。経営の失敗は十分に起こりうること。大事なのは悪化していく事態から目をそらすことではなくて、失敗経験を次に生かしてより良い人生を歩んでいくことです。
士業ではありませんが、ある事業者は撤退する勇気を持ち合わせていないために泥沼にはまり込んでいました。運転資金を得るためだけに言葉を尽くして借入金を増やしたものの、数か月で溶かしてしまった時には事態はまったく改善されていませんでした。それどころか借入金が増えた分だけ事態は悪化したとも言えます。最後にはビジョンや理念とはかけ離れた案件にも手を出す始末。これでは何のために創業したのかわかりません。その後どうなったかは知りませんが、撤退する勇気を持ち合わせなかったための悲劇でした。
資格を取得するために試験勉強をしている間は幸せです。わかりやすい合格基準が設定されているので、そこを目指して勉強し続ければ良いからです。しかし独立開業したら不確かな未来に向かって行動し続けなければなりません。その時に必要なのはいくつかの勇気です。
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