士業マーケティング やらないことを決める

同じ資格を持っているだけなら競合が数万人いるのが士業のつらいところです。見込客から選んでもらうためには、「やらないこと」を決めるのも一つの考え方です。私があえて手を付けないようにしていることについて書いてみます。
教科書に書いてあるようなことを発信しない
士業に情報発信は欠かせません。何かを売りつけたり、承認欲求を満たしたりするために発信するのではなく、ただ一つの目的は見込客に知ってもらうためです。
ある士業の方が開業する際の様子を聞かせてもらったことがあるのですが、ホームページを用意してくれる業者が存在するそう。驚くべきことにコンテンツまで提供してくれるとのことで、とりあえず体裁だけを整えようとする人がつい使ってしまうようです。コンテンツといってもありふれた法改正情報で、士業でなくても誰もが発信できるような内容です。こうした業者につかまってしまうと見込客に選ばれるどころか、その他大勢に埋もれてしまうことになります。
私が情報発信で心掛けているのは自分の考えを臆さずにさらけ出すことです。「底が浅いと思われるかな」「支離滅裂になっていないかな」などと今でも心配になることがありますが、それでも等身大の自分をまっすぐに表現するようにしています。こうして発信を続けていれば、見込客とのミスマッチを防ぐことができますし、何より、感性が合うであろう人と繋がる可能性が高くなります。
当たり障りの無い発信をしていては競合と違いを生み出すことはできません。独自の立ち位置を築くことで、見込客から選ばれることが可能になります。同じ資格を持っている競合が数万人もいる士業だからこそ、情報発信では個性を伝える勇気が必要です。
同業者の集まりに顔を出さない
私は社会保険労務士会の集まりには一切、出席しないことにしています。会務(の中でもロビー活動)に携わっていただいている方には感謝していますが、商売という点から見れば時間の無駄だと考えているからです。仕事を紹介してもらったり、行政の仕事を割り振ってもらえたりとメリットはあるのでしょうが、他人の力を当てにするよりも自分で動いた方が手っ取り早いですし、好きに行動できます。群れてしまうと余計な人間関係に縛られて、独立開業して得たせっかくの自由が減ってしまうのです。
知り合いの士業(社会保険労務士ではありません)が会務に積極的に関わっていましたが、他の会員にうまく利用されているようにしか見えませんでした。事務局の仕事をさせられて、わずかな謝金は得ていたようですが、せいぜいバイト代程度の金額。なんのために勉強して資格を取り、独立開業して事務所を構えたのでしょう。
同業者に囲まれていると安心感を得られるのかもしれません。同じ資格を持っていて、同じように独立開業していて、同じ地域に住んでいて。でも同業者は競合でもあります。同業者と過ごす時間を作るくらいであれば、見込客と関係性を構築する方が先のはず。事務所経営を他人に任せているくらいの余裕があれば同業者との集まりも暇つぶしになるのでしょうが、現役世代にそんなヒマはありません。居心地の良い場所から抜け出し、見込客と対話しましょう。

教科書に書いてあるようなことを発信しても見込客に選ばれるきっかけにはなりません
時間を切り売りするような仕事をしない
士業の業務は法律で定められています。私は社会保険労務士として登録していますが、いわゆる独占業務には手を出していません。社会保険の手続きだとかを依頼されてもお断りするようにしているのです。独占業務ではありませんが給与計算も同じで、受託できれば貴重な収入源になるかもしれませんが、一切、お断りしています。
こうした業務を受けない理由は時間が拘束されてしまうから。手続き業務であればスピード感が求められますし、締め切りもあることでしょう(よくわからないけど)。また給与計算であれば絶対に遅らすことができないので毎月支給日前には忙殺されるのでしょう(よくわからないけど)。私は時間を切り売りするような働き方をしたくないので、こうした業務は受けていません。私で無くてもいくらでも優秀な人がこうした業務を手がけているので、今さら勉強してスキルを身につけようとも思えません。
代わりに提供しているのが、中小企業支援。経営者と対話して今より良くなるためのお手伝いをしています。真の中小企業支援を手がけている人はほとんどいないので、私のような者でも重宝してもらえます。社会保険労務士の屋号を掲げているものの、実際は中小企業支援が事業の柱です。
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