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コラム

士業マーケティング 言いづらいことを言える関係を築く

士業が経営者に対し、教科書に書いてあるようなことを伝えているだけなら、多くの競合の中から選んでもらえません。時に言いづらいことも言えるくらいの関係を築き、長く取引できるように事業の成長に貢献しましょう。諫言とは、目上の人の問題行為を指摘すること。士業と経営者は対等の関係ではありますが、経営者に対しもの申すことを恐れずに向き合うべきだと思っています。

「悪い奴に会社を乗っ取られますよ」

ある経営者は何でも私を頼って質問してきます。中小企業支援家としてはありがたいことなのですが、経営者が自ら思考できなくなってしまうようでは本末転倒です。ある時、何のことだったか、検索すれば容易にわかるようなことを私に尋ねてきました。真面目に、です。その際に私が伝えたのは、「こんなことを社外の人間に平気で尋ねていたら、悪い奴に会社を乗っ取られてしまいますよ」という言葉でした。

悪い奴というのは世の中にいくらでも存在していて、中小企業を食いものにしようと虎視眈々と狙っています。そうした輩は取り入りやすい経営者というのを探していて、最初は甘い言葉を弄し会社の中へ巧みに入り込んできます。以前に関わったことのある経営者も、一度、会社を乗っ取られてしまったことがあるとのこと。「乗っ取りなんて本当の話なのか」と思うかもしれませんが、無知な経営者や思考を放棄している経営者は悪い奴らに付け込まれやすいのです。

もし私が悪い奴だったら、経営者が機能していない会社に入り込むのは簡単なことです。適当な理由をつけて、「取締役にしろ」だとか、「株をよこせ」だとか、「知り合いを採用しろ」だとか迫ればいいのです。思考を放棄している経営者は信頼している人物の言うことを丸のみにしてしまいがち。そこを逆手に取って、徐々に乗っ取ってしまうのです。

もちろん私はそんなことをしませんが、相手によっては可能だということ。信頼されているからには、こうした事態に陥らないように経営者に注意喚起してやる必要があります。何を言うのだと驚かれてしまうかもしれませんが、それでも伝えなければいけないことがあるのです。

「番頭さんを外部から採用してください」

ある会社は組織が急速に大きくなり、経営者の目が行き届かなくなりつつありました。そうした過程で経営者の長女が入社したのですが、私から見たら完全に実力不足。経営者の右腕になるためにはまだまだ社会人経験が必要な状態でした。そんな私が経営者に申し上げたのが、「番頭さんを外部から採用してください」ということ。社内にこれという人材がおらず、といってこのままでは組織は崩壊してしまいそう。外部から人材を取り入れるしかないと判断したのです。

私の話を聞いた経営者は最初、意外そうな顔をして、しばらくしたら気分を害してしまったようでした。自分の長女の実務能力を私が認めていないと気付いたからでしょう。でもここで親子におべっかを使ったところで誰の得にもなりません。多少言いづらかったとしても、経営者のためを真に思えばこそ、こうした発言をするようにしているのです。

金の王冠と、銀の王冠

経営者を裸の王様にしてはいけません

時に厳しい現実を突きつける

中小企業支援に携わっていて避けられないのが、事業の存続に関わる資金繰りの話です。SNSなどを眺めているとキラキラとした成功事例らしきものばかりが目につきますが、実際には多くの中小企業が日々苦労しながら事業を営んでいます。

先日もある会社と資金繰りの見通しについて議論をしました。「保守的な予測に基づく資金繰り予測表を作成しましょう」、「リスケが必要なら早めに銀行と話しましょう」、「客観的に無理と判断したら、勇気ある撤退も選択肢に入れましょう」といったことを私からお伝えしました。特に最後の言葉は言いづらいと言えば、言いづらいメッセージです。事業会社を経営しているからには存続し続けるのが前提なので、消耗しきる前に廃業の決断を下すというのは多くの経営者が嫌うとわかっているからです。

中小企業支援というと経営のノウハウを伝えたり、売上アップの方法を授けたりといったイメージがあるかもしれません。でも経営に、絶対の方程式や魔法の杖なんて存在しません。時に厳しい現実を突きつける役割を負うのも、中小企業支援家や我々士業の仕事だと考えています。


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