開口一番、何を話すか

中小企業支援に携わっているので経営者と対話する日々です。当たり前の話ですが、状況によりどんな話をするかは変わってきます。開口一番にどんなことを尋ねているか、書いてみます。
「資金繰りの状況は?」
業績が芳しくない企業の経営者とお話しする時は、真っ先に資金繰りの状況をお伺いすることにしています。挨拶や多少の雑談はしますが、最初に資金繰りの様子を確認しなければ、何がどうなっているのかわからないからです。
先日もある会社を訪問した際に、真っ先に資金繰りの様子を尋ねました。おそらく厳しい状況だろうなと想像していたら、案の定、数か月先には資金ショートとなる見込みだと言います。ここからは売上見通し、削減できるであろう経費の有無などを確認していきます。こうした状況にあるからといって資金繰り予測表が作成されているとは限らず、経営者の頭の中にぼんやりとある状況を可視化していかねばなりません。
この時に気を付けるのが、売上予測を保守的に見積もること。注文書をいただいている案件以外は資金繰り予測表に反映させることはせず、ぜったいに入金されるであろう見通しだけを採用していきます。多くの経営者は「たぶん受注できます」とか、「もうほとんど詰まっています」などと言うのですが信用できません。あやふやな予測で資金繰り予測表を作成してしまうと、後で足をすくわれることになりかねません。
つきつめれば、資金さえ回っていれば会社は存続できます。反対にどんなに黒字であっても、資金が尽きたらそこで終了。あれこれ財務の数字を弄り回すなんてことをせずに、まずは資金繰り予測表の次月繰越額がプラスで推移しているかどうかを確認するようにしています。
「何かややこしいことが発生していませんか」
資金に不安がなさそうな会社の場合、最初に「何かややこしいことが発生していませんか」と尋ねることにしています。私と対話するにあたって、最初に嫌なニュースを教えてもらいたいからです。ビジョンがどうとか、戦略がどうとかも大事なのですが、まずは目の前の課題を教えてもらいたいのです。
多くの経営者はこの質問をすると「特にありませんが、実は、、、」といった感じで課題を打ち明けてくれます。岡田が想定しているような悪い事態ではないものの、嫌なニュースを教えてくれるのです。先日あったのは、某店舗が退店を迫られているという内容でした。想定していなかった店舗閉鎖をすることになり、売上の下方修正が必要だという話。私からはこの危機に既存店をどうするとかといった点の話ではなく、こうした状況だからこそ新規事業に邁進して欲しいとお伝えしました。
嫌なニュース、悪いニュースから先に教えてもらいたいというのは家業の代表取締役を務めていた時からの習性です。何かがうまく回っていれば口を挟む必要はありませんが、もしうまくいっていないのであれば対処が必要。機を逃さないためにも嫌なニュース、悪いニュースから教えていただきたいのです。

経営とはお金を増やすゲームです
「従業員さんは元気に働いていますか」
従業員との問題を抱えていそうな経営者には「従業員さんは元気に働いていますか」と尋ねます。しっかり把握している経営者は「そうですね、みんな元気にやってくれています」と力強く断言してくれますし、反対に従業員とのコミュニケーションが不足している経営者は「え、えぇ、特に問題はないと思います、、、」などと歯切れの悪い答え方をしてきます。
ある経営者は明らかに対話不足。そのことを棚に上げて従業員の態度などについて不満を募らせています。挨拶がないとか、協調性がないとか。一見、従業員の振る舞いに問題があるように思えますが、従業員の側にもそうした振る舞いをしてしまう理由がなにかあるはず。私に愚痴をこぼしたつもりが、実は会社側に問題があったなんてことはよくあります。この会社の場合は、経営者の考えを日常的に発信してもらうように提案しました。経営者が何を考えているのか、説明されなければ従業員は理解できません。経営者にとっては当たり前のことでも、かんで含めるように伝え続けなければいけないのです。
経営者は、就業時間中、全従業員のお父さんであり、お母さんです。さまざまな個性が寄り集まっているわけなので経営者の思い通りにならないこともあるでしょう。しかし、大小さまざまな事件があったとしても従業員が元気に働けていればそれで良し。従業員が元気に働ける環境を整えるのが、経営者の役割の一つです。
ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています
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