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コラム

経営者に求められる対話力

株主総会の季節がやってきました。

株主・投資家との対話

総会シーズンです。社外取締役を務めている会社の株主総会が近づいてきました。早くオンラインに移行してもらいたいなと考えつつ、毎年、総会だけは会場へ足を運んで出席しています。この会社の総会へは何度も社外取締役として出席していますが、株主がやってきたのは2回だけです。社長は株主の出席が少ない方がうれしいようですが、私は違います。年に一度の機会なので、できるだけ多くの株主にやって来てもらった方が張り合いがあるというものです。

経営者にはさまざまな資質が求められますが、最も重要なものの一つが対話力でしょう。利害関係者と対話し、自社の事業戦略に共感してもらえるように努めるというのは経営者だからこそできる仕事です。

ある創業間もない会社の経営者に投資家との対話の機会を設けたことがあります。投資には至らなかったとしても、投資家の考えていることや目線を知る良い機会になると考えました。ところが結果は失敗。経営者が自分のことを滔々と語るばかりで対話が成り立たなかったのです。一番顕著だったのが社名の由来に1/3も時間を費やしたこと。投資家は我慢強く聞いてくれていましたが、社名なんかに関心がないのは一目瞭然でした。でも経営者はそのことに気付かず、話したいことをしゃべり散らかしてしまったのです。

経営者が株主・投資家と話す目的はなんでしょうか。「安心して資本を提供してください」「こうやって事業を成長させるのでどうか見守ってください」と説明するのが目的のはずです。この本質を忘れてしまうと、株主・投資家との対話は成り立ちません。

家業の代表取締役を務めていたとき、仕入先でもあり株主でもある会社の経営者とお話しするときは、立場の違いによって話し方を切り替えていました。仕入先の経営者としてお話しするときはお互いに利を得るためのパートナーとして、株主としてお話しするときは会社に出資していただいている出資者として。同じ人物であったとしても立場が異なれば話す内容は自ずと変わってくるのです。

行政・支援者との対話

中小企業を経営しているとさまざまな支援メニューが用意されているので、行政や支援機関の担当者との対話が求められることもあります。私も支援者側の一員として経営者と対話を試みることがありますが、上手に支援を活用する経営者に共通しているのは対話力が高いことです。反対に対話力が弱い経営者は、「支援してもらって当たり前」「とりあえずお金が欲しい」といった姿勢で接してくるので対話が成り立ちません。行政や支援機関を利害関係者と考えていないので、説明を省こうとしたり、未来を語ることを避けたりしてしまうのです。

行政や支援機関の担当者も利害関係者だと考えれば接し方も変わってくるはず。社会をどのように変えていきたいのか、そのためにどのような価値を提供できるのか、目下どのような状況にあるのか。支援メニューを寄越せとばかりに高圧的に接したところで共感されるわけもなく、当然、支援対象としての優先順位が下がるだけです。株主や投資家と接するのと同じように対話することで、より適切な支援メニューが提供されやすくなることでしょう。

ある経営者は日頃から尊大な態度が話題になっていました。従業員の入れ替わりも激しく、取引先へも厳しく接しているのが何度も目撃されていました。もちろん、支援者への態度も同じ。なぜだか日頃から偉そうにしているので関係者からは疎まれていました。そうした態度が原因となって、目に見えない損失が発生していることに気付いていないのは経営者本人だけ。まさに裸の王様となっていました。

対話の様子

人の話は最後まで聞きましょう

改善はいつでもできる

対話の機会はこれまでもあったのに、なぜだか応援してもらえない、理解されないと感じるのであれば自らの対話力を疑いましょう。対話の成り立つ相手と見做されなければ、共感されることはありません。対話の第一歩は相手の言葉を受け止めることです。そもそも人の話を最後まで聞けない人は相手にされません。自分の話したいことだけ話していませんか?独りよがりな説明を繰り返していませんか?経営者の対話力は事業の持続可能性に直結します。

経営者となると一国一城の主なのでプライドもあることでしょう。でも、もし違和感を覚えたのであれば、他人のせいにする前にまずは我が身を振り返ってみましょう。プレゼンの場で一方的に話すだけでなく相手の反応を伺ってみてください。対話の場で自分より相手が言葉を多く発するように立ち回ってみてください。まずは自分が正しいという思い込みを捨てましょう。対話力を高めるための改善はいつからでも可能です。


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