どのようなオフィスにするか

中小企業支援に携わっているので様々な企業を訪問する機会があります。昨日もちょうど顧問先を廻って来たばかり。オフィスにはそれぞれの会社の個性が表れます。
ミニ四駆のサーキットがあるオフィス
ある会社を訪れると、オフィスの真ん中にミニ四駆のサーキットが設置されていました。従業員の間でミニ四駆が流行っているのかなと尋ねてみると、仕事中に遊んでいるとのこと。新しいアイデアを生み出すためにパソコンの前に張り付いて頭を悩ますのではなく、ミニ四駆を改造したり走らせたりする過程で思わぬヒントが得られるというのです。
スマホとパソコンさえあればどこでも仕事をすることは可能です。でも、わざわざオフィスを構えるのであれば、なにか工夫したいもの。従業員をデスクに縛り付けておけば生産性がするすると向上し続けるわけではありません。ミニ四駆のサーキットには驚かされましたが、会社それぞれが個性を発揮する余地がありそうです。
反対に割り切っている人はバーチャルオフィスを利用することでしょう。登記可能な物件であれば法人の本店所在地にすることも可能。最近知り合った経営者も、創業間もないのでバーチャルオフィスで十分だと話していました。
私が今創業するのであればバーチャルオフィスを利用するか、反対に中古の空き家を購入してしまうと思います。賃料を払い続けるのが一番もったいないと思っているからです。バーチャルオフィスを利用して徹底的にリモートで働けるように環境を構築するか、多少不便なところにあっても一軒家の空き家などを安く購入してしまう方が賃貸物件に振り回されない経営が実現できると思います。
経営者が後ろから見張っているオフィス
ある創業間もない会社ではデスクの配置が独特でした。従業員の背後から経営者が見張るような位置関係になっているのです。一挙手一投足を見られていて、創造的な仕事ができるのでしょうか。そうした経営者に限って、自分は好きな時間に昼寝をしている始末で、もちろん業績は低空飛行が続いていました。今はどうなっていることでしょう。
セキュリティ上、パソコンの利用状況を監視する必要はあると思いますが、オフィス内で経営者自らが従業員を見張るというのはいただけません。見張らなければいけないほど信用できない従業員なのか、経営者が他にすることがないほど暇なのか。いずれにせよ健全な状況でないのは明らかです。
誤解を恐れずに言えば、就業時間中に100%の集中力を維持できる従業員など存在するわけがありません。適度な息抜きを容認できないような組織は人間というものを知らないのでしょう。
私があるプロジェクトに関わっていた時は、スタッフに「私の前で仕事をしているフリをしなくて良いです」と伝えていました。暇な時には本を読んでも良いし、お茶も飲んでくださいと。ただし、ここぞという時には集中力を発揮してくださいと話しました。私からしたら、スタッフがお茶を飲んでいるということはトラブルなく事業が運営できている証拠でした。反対にイライラとパソコンに向かっている姿を見かけてしまうと、何か起きていやしないかと心配になったものです。

こんなコースがオフィスに設置されていました
そういえば茶室があった
私のかつての家業では、本社ビルの最上階に茶室がありました。おそらく大叔父が設置させたのでしょう。私が出入りするようになったときはすでに誰も使わなくなっていましたが、一時は従業員も茶道のお稽古をするのに使っていたとか。今にして思えば、贅沢な空間の使い方をしていたのだなと気づきます。茶わん屋を辞めてから茶道のお稽古を始めた私にはうらやましい限りです。もし社長を務めている時からお茶を始めていたら、お稽古に没頭して現実逃避していたかもしれません。
経営者には一人になる時間も必要。私もよく社長室のソファーにひっくり返って寝ていました。社長だからと個室に篭ってばかりいるのは感心しませんが、一人で過ごせるスペースは絶対に必要です。従業員と違って定型業務を(ほぼ)持たないのが経営者ですから、物思いにふける時間も立派な業務なのです。顧問先の経営者へは、「ぼやっと過ごせる時間を確保してください」と勧めています。経営者が常にバタバタしているのは健全な状態ではありません。従業員は忙しく働いていたとしても、経営者は10年後の事業に思いを巡らせているくらいがちょうど良いのです。
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