自分のプレゼン能力を疑え

今日は土曜日なので最近考えていることをつらつらと書いてみます。
「買ってください」は禁句
ある経営者が売上を増やそうと、全国の企業へDMを発送したいと言い出しました。それ以上の深い考えは特に無いようで、要は「買ってください」と商品カタログを送りつけるだけのもの。見込客の困りごとがなんであるかだとか、その困りごとをどう解決するかといった視点はまったくありませんでした。こうしたDMが送られてきたとしても無視されることがほとんど。一般的にDMの反応率が0.1 %とされていますが、実際はわずか1000通くらい送ったところで反応はゼロ件でしょう。
人は何かを強制されたり押しつけられることを嫌います。こう書くと当たり前のことだと誰もが理解してくれるのですが、いざ自分が商売を始めるとこの当たり前が抜け落ちてしまいがちです。平気で見込客の事情などお構いなしに、「買ってください」と連呼し始めるのです。
この経営者へは押しつけがましいDMを送ることを思いとどまってもらいました。代わりにお勧めしたのが見込客との関係性を構築し、自然と自社商品が選ばれるような仕組み作り。自分たちの商品を用いている人がどのように幸せになっているのか、どのような世界観をもたらしてくれるのかを情報発信し、自然な形で共感してもらうことを目指すのです。もちろん手間は掛かりますし、時間も掛かります。でもこの遠回りに見える取り組みこそが商売の王道なのです。「買ってください」と叫び続けたところで嫌われるだけで、反対に見込客から選ばれる仕組みを作り上げれば自然と売上は伸びていくのです。
誤解のないように説明しておくと、DMという手段が悪いとは思っていません。顧客名簿を元にメッセージ性のあるDMはそれなりの効果を生み出してくれることでしょう。私が違和感を抱いたのは、DMで「買ってください」と伝えればそれだけで選んでもらえるだろうという雑な思考です。商売とはそんな安直なものではありません。見込客との間合いを詰め、選んでもらえる仕組み作りが商売の楽しさであり、難しさなのです。
自分のプレゼン能力を疑え
先日、ある経営者のプレゼンを聴く機会がありました。ご本人はいろいろ場数を踏んでいるとのことで、ご自身のプレゼン能力に大きな自信を抱いているようでした。ところが私の評価は最低ランク。もしご本人にその気があるのであれば、ゼロからプレゼンの練習が必要だと感じるくらいでした。まるで学校の先生が生徒に対するような口調は聴き手を白けさせますし、また質問のように見せかけた「客いじり」は不快感さえ抱かせます。ご本人は良かれと思ってしていたのでしょうが、この調子ではプレゼンによって共感を集めるどころか、嫌われてしまうのではなかろうかと心配になるレベルだったのです。
プレゼンの目的は上手に発表することではなくて、共感してもらいその後の支援に結びつけることです。何か勘違いしてしまっている人は、パワポ資料の見栄えや、身振り手振りや口調などが重要だと思い込んでいます。上手に話すことができたり、パワポ資料がきれいであったりすれば悪いことではないのですが、それだけでは目的を達成することはできません。反対に言えば、ボソボソとした口ぶりで背中を丸めて立っていても、共感され、その後に支援を得られるのであれば何の問題も無いのです。
プレゼンというと技術に走って、変な思い込みをしている人が多いです。プレゼン講座のようなものも公的支援機関が開催していますが、そこが本質なのではありません。筋の悪い事業はプレゼンでどうにかできるものではなく、いつまで経っても筋が悪いままなのです。良い筋の事業であれば、どんなにたどたどしい口調であっても誠意を込めて話せば共感は得られます。プレゼン術ばかりが重視される風潮に危惧を抱いていますし、また自分のプレゼン能力を過大に評価する人が多いことにも辟易しています。人の振り見て我が振り直せ。自分も気を付けます。

このあと、アマチュア無線の交信をする予定です
夜の交信に誘ってもらった
今日はこのあと21時からアマチュア無線の交信をすることになっています。モールス信号(CW)を楽しむ人から誘ってもらって、日時を合わせて電波を出しましょうという試み。Xにアマチュア無線用のアカウントを持っているので、そこから連絡をいただいたのです。
最近は茶道とアマチュア無線が趣味になっていて、どちらもうまく楽しむことができています。茶道のお稽古は毎週土曜日の午後。基本的に他の予定が入りそうになっても「先約があります」とお断りしてお稽古を優先しています。私にとっては仕事以外のことに没入できる貴重な時間で、週に一度、頭をまっさらにすることができる機会です。
アマチュア無線も同様で、交信中は他のことなど考える余裕もなく没入してしまいます。iPhoneを触っていると本を読んだり、SNSを開いたり、メールやスケジュールをチェックしたりとなかなか集中できませんが、無線機に向き合っているときは別。遠くから聞こえてくるかすかな音に耳を澄まし、無線機をああでもあないこうでもないと操作する時間はあっという間に過ぎていきます。
あいにく外は雨。こういう日に電波がよく飛ぶのかどうかもよくわかりませんが、さっさと風呂に入って交信に備えることにします。
ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています
関連記事