士業マーケティング 15分間話せることを用意する

独立開業したからには独自の立ち位置を築いて、競合と比較されないようにする必要があります。さて、自分にどんな独自性があるのか。このことを考える時に有用なのが、15分間話せるコンテンツを見つけることです。
15分間話せることは何か
士業が知識と資格を持っていることは当たり前で、それだけでは競合との違いを表すことができません。見込客がどの士業に仕事を依頼しようか比較する時に、差が無ければ価格と距離だけで比べられることになってしまいます。つまり、独自の立ち位置を用意できていなければ、近くて安い士業しか見込客から選ばれることはないのです。
独自の立ち位置を築くといっても、いきなりは難しいかもしれません。人は誰しも自分の真の強みを明確に理解できていないものです。私がお勧めしているのはまずは15分間話せるコンテンツを用意すること。人前で15分間、なんでも良いので話せるとしたら何を話しますか。自分の経歴、趣味などなんでも良いのです。
私が中小企業支援家に転身して初めて話したのは家業を事業譲渡した概要についてでした。某省庁の勉強会に呼ばれ、15分だけ時間が割り当てられてお話しすることになりました。用意したのは、たしかスライド一枚のみ。今から振り返ったら稚拙なスライドで、早口でぼそぼそとお話ししたような記憶があります。
プレゼン能力は低いものでしたが、反応は上々。霞ヶ関で働く官僚の人々にとっては、地方中小企業の破綻と事業譲渡のリアルを聞く機会などなかったというのです。この時の反応に勇気づけられ、自分の経験がどなたかの役に立つのであればと講演活動を始めることになりました。またメディアにも取り上げられ、本業の顧問契約にも結び付いたのには驚きました。自分にとっては壮大な失敗体験ではあるのですが、15分間話したことがきっかけで独自の立ち位置を築くことに繋がったのです。
3つ用意すればセミナーになる
たった15分間であれば、誰でもいくつかは話せることがあるはず。3つを組み合わせれば45分。立派なセミナーが成り立ちます。士業が見込客から選んでもらうためには、まずは自己開示が必要で、セミナーを開催できれば地域の経営者と繋がることができます。
ある経営者は取引金融機関と組んでセミナーを企画しました。「銀行からの共催を取り付けるなんてすごい!何か特別な縁があるに違いない」と思われるかもしれませんが、シンプルに提案しただけ。地域の中小企業経営者の役に立つコンテンツを用意できるのであれば、それは取引金融機関にとってもメリットのあることなのです。できたらいいな、で終わるのではなく、ダメ元で行動したからこそ実現した企画でした。
またセミナーを開催するというと経験の少ない人は尻込みしてしまいがちです。でも何事も「初めて」があって経験を積んでいくもの。恐れずに行動する者だけが次の機会を手にすることができます。なにか曲芸をするわけでもなくて、ただ目を見て話すだけ。そう考えれば、セミナーを企画し人前で話すことなんて大したことではないと思えることでしょう。

15分間話せることなら見つかるはず
15分間話すためのテクニック
15分間話す場合、私であれば用意するのはスライド3枚分のコンテンツです。1枚のスライドに3つのトピックを盛り込むので、計9つのトピックがあれば15分間話し続けることが可能です。白紙で15分間話すのは無理でも、こうして分解して考えれば現実的な高さのハードルだと考えることができるでしょう。
一昨年、昨年と6時間の講演をしたことがあります。某公的機関の創業支援担当者向けに話してくれという依頼で、あまりに長時間なので最初は受けるかどうか悩んでしまいました。でも私の手持ちのネタを掘り起こしてみると、なんとか6時間をこなすことができそうと気付き、未知の世界の案件でしたがお引き受けさせてもらいました。この時も考え方は同じ。90分のコマを午前2つ、午後2つと考えて分解し、それぞれ話すべきことを用意するだけ。足りない分はインタビュー動画を用意したりと工夫もしました。
さらに念を入れるのであれば、予備のトピックも用意しておけば安心です。手持ちのトピックだけで時間が余ってしまった時に使うネタを用意しておくのです。私の場合は中小企業支援事例を時間調整用に用いています。事例はいくらでもあるので、残り時間に応じて紹介する数を調節すればいいだけ。最近ではほとんど使うことはなくなりましたが、いざという時に話すことが無くなるという最悪の事態を避けるための保険になっています。
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