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コラム

創業まもない企業は誰をパートナーに選ぶべきか

経営者は孤独なものです。その孤独から逃げるために安直にパートナーを選んでいないでしょうか。創業まもない企業のパートナー選びの在り方について書いてみます。

事業の核心に関わる人を選ぶ

先日、創業まもない企業の経営者とお話しする機会がありました。その会社は他に非常勤の取締役が一人いるだけ。実務は経営者が一人で担っていて、今はまだ初期的な支援者探しに駆け回っている状態です。まさにスタートアップ。事業を興した目的を端的に語る姿は眩しいものでした。

パートナーである取締役をなぜ選任したのかと問うと、事業を推進するのに必須のツールに関わる人物だからとのこと。ツールを調達できているのも、その人物の人脈が効果を発揮しているからだと教えてくれました。まさに事業の核心に関わる欠くことのできない人材だからこそ、取締役として選任されたのです。

こうした理由が明確に存在するのであれば、創業まもない企業がパートナーを選ぶのには賛成です。ただし、ろくな理由も無いのにパートナーを招き入れてしまうと業務執行が混乱することになります。理由がないのであれば、しばらくの間、経営者が1人で道を進む勇気が必要。この孤独に耐えられないようであれば最初から創業すべきではありません。

友達というだけでパートナーにしてはいけない

パートナーの選び方を間違えた事例もあります。ある経営者は友達と2人で起業すると言います。よくよく話を聞き出してみると、友達が不本意な形で職を失ってしまったので可哀想に思っていること、その友達のために起業しようとしていることがわかりました。出資しているのは経営者のみ。私からしたら友達はただの従業員という立場にすぎないのですが、成り行き上、パートナーのように振る舞っていることに違和感を感じてしまいました。

結果として短期間で2人は決裂。事業の運営に欠かすことのできないピースでもないのに「友達」を招き寄せてしまい、いつしか関係がギクシャクするようになってしまったのです。友達をパートナーに据えたことに顧客への価値提供という視点はまったく考慮されていませんでした。趣味の活動ならともかく、事業会社を成長させようとするのに私情を混じえた時点で予見できた結末だったのです。

またある会社では前職で懇意にしていた先輩を雇い入れたものの、泥臭い実務をしようとせずに、しかし、経営者の片腕のように振る舞い始めたのでやむなく解雇したそう。どのような働きを期待しているかを事前に明確にしていなかったために起こった不幸で、従業員を雇い入れただけのつもりの経営者と、何かを期待されて呼ばれたからには経営者のために働かなければならないと気負った友人の思惑が行き違ったのです。

知人、友人だからというだけの理由で会社に招き入れてもそこに顧客はまったく関係ありません。なぜその人物が必要なのか、顧客にどんな価値を提供してくれるのか。この2点を説明できるのであれば、貴重なパートナーになることでしょう。

履歴事項全部証明書

実態の無い人物が経営に関わらないようにしましょう

必要のない取締役をなぜ入れるのか?

ある創業まもない会社には非常勤の取締役がいるそう。この人物は何をしているのかと尋ねてもゴニョゴニョとした言葉が返ってくるだけで要領を得ません。どうやら、名ばかりの社外取締役の模様。事業にはまったく関わっておらず、取締役会の構成を充実した顔ぶれに見せるためだけに名を連ねているようでした。

私からしたら、この名ばかり社外取締役は大きなリスクを負ってまで、よくも名前を貸しているなと呆れてしまいます。取締役となれば会社法上のさまざまな責任を負う立場。何かあった際に「名前だけで実務をしていないので知りません」とは言えません。それどころか経営者に事故があった際には、代わりに事業を推進する責任も生じます。

また、会社側の考えも問われます。事業に関係のない人物が取締役会にいるというのは、逆に不信感を抱かせます。支援しようとする人々は履歴事項全部証明書などを読み込みます。実態の無い怪しげな人物の名がそこにあれば、それだけで支援をためらうことになりかねません。

取締役を選任するのであれば、選ぶ方も選ばれる方も会社法をよく読みましょう。もし法律上生じる責任の重さを理解しているのであれば、名前だけの取締役なんてあり得ないことがわかるはず。そんなことをしてしまう時点で、経営のセンスが問われかねません。


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