格安SIM会社にもファンコミュニティが存在する

見込客との関係性構築が商売を軌道に乗せるためのポイントです。売ろうとばかりしても見込客は逃げ水のように離れていくだけ。「売りたい」という気持ちをぐっとこらえ、まずは見込客と向き合う余裕を持ちましょう。
格安SIM会社にもファンコミュニティが存在する
「マイネオ」ファンサイト10周年
日経電子版 2025年4月16日https://www.nikkei.com/article/DGKKZO88054090V10C25A4H53A00/
格安SIMを提供している会社がファンコミュニティを運営しているという記事を読んで驚きました。もちろん利用者がいるサービスであるはずですが、格安SIMという商材でもファンコミュニティが成り立つとは。この業種ですら顧客との関係性構築に手間をかけているのですから、その他の業種でもできるはず。いや、絶対にやらねばなりません。
ある顧問先は家庭用品を販売していますが売上は弱含み状態です。売ることだけを考えている会社は、顧客にその底の浅い思惑を悟られてしまうものなのです。私はかねてから顧客を巻き込んだマーケティング手法を取り入れるように提案しているのですが、経営者は手間ばかりが気になってしまい及び腰。売ろうと考えるのであれば、まずは見込客との関係性を構築するのが先。早くこのことに気づいて欲しいと願っています。
反対に新規事業に取り組んでいるある会社はまだ多くの数の顧客名簿を持っていません。にもかかわらず、参加者が少なくても良いからと体験型イベントを開催しようと準備中です。これは素晴らしいこと。売ろうとばかり考えていると消費者は逃げていくもの。一度立ち止まり、見込客との間合いをつめるためのイベントを開催するくらいの余裕を持ちたいものです。
非営利法人にもファンコミュニティを導入する
ある非営利法人も私の顧問先です。以前から促していたサポーターズクラブがようやく立ち上がることになると報告を受けました。地域に根ざした確かな活動を続けているので多くの賛同者がいるにもかかわらず、これまでその受け皿となる仕組みを用意できていませんでした。「⚪︎⚪︎(法人名)を応援したい!」と考える人がいてもその機会を提供できていなかったのです。
サポーターズクラブの会長には地元企業の有力者に就いていただくことに。法人が開催するイベントの裏方業務などを手伝うのが主な活動内容となります。会員には年会費を支払ってもらうこととし、個人はもちろん、地元企業にも法人として参加してもらえるように仕組みを整えました。これまで職員が手掛けていた季節毎のイベントを、今後は多くの賛同者がお手伝いできることになりました。
非営利法人こそファンコミュニティと相性が良いはず。社会課題を解決するその活動内容に共感する地域住民や企業は多いはずで、彼ら彼女らは何らかの形で非営利法人を応援したいと願っているのです。日々の業務に追われているとそのことを見失いがち。負担を全て自分たちで引き受ける必要などなくて、応援したがっている人をうまく巻き込んでいけば一石二鳥にも三鳥にもなるのです。

顧客とバーベキューをできるような関係を築き上げましょう
中小企業支援にもファンコミュニティが通用した
江戸時代から続く家業を事業譲渡したあと、中小企業支援業界に転職した私を待ち受けていたのは、支援そのものではなく、初めての土地でまずは自分を知ってもらうことでした。行政が設置した事業相談窓口の責任者となったので一刻も早く支援成果が欲しかったのですが、しばらくのうちは地域の経営者や創業を志す方との関係性構築に注力しました。飲み会や集まりがあると聞くと顔を出して挨拶する日々。最初は身構えている方が多かったように感じましたが、徐々に私のことを受け入れてもらえるようになりました。
経営者が私のもとへ訪れてくれるようになってからは支援事例を次々と生み出すことができ、仕事も軌道に乗りました。その頃になって気づいたのが、私を核にした緩やかなコミュニティができていたことでした。意図して作ったものではないのですが、地域の経営者や創業を志す方の繋がりが形成されていたのです。つまり、事業相談窓口のファンコミュニティで、その後も退職するまで私の支えとなってくれる存在になりました。
そういえば家業の代表取締役を務めていたときは、仕入先の社長さんたちで構成される取引先会に何度も助けていただきました。こうした経験があったからこそ、無意識のうちにファンコミュニティを支えに行動することができていたのかもしれません。
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