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コラム

キックバックは正常な商行為に無駄なコストを上乗せする

保険会社から営業を受ける機会があり、その場で露骨にキックバックを提案されて驚いてしまいました。キックバックについて書いてみます。

裏金に頼らなくては売れないと自白しているようなもの

先日、団体保険を取り扱う会社から営業を受けました。私の顧問先へ保険商品を紹介して欲しいというのです。私から申し上げたのは、顧問先が本当に必要とするのであれば紹介する可能性があるが、求めてもいないものを闇雲に紹介することは無いということ。保険会社の手先のように勧めるつもりはないということです。

さらに言われたのが「キックバックがあれば紹介してくれるのか」という言葉。つまり、もし顧問先がその団体保険を取り扱ってくれたら、いくらかを私に支払うつもりがあると言うのです。それに対しては「キックバックなんかもらったら利益相反になる」と突っぱねました。キックバックがもらえるとなると、それだけで儲け話になると勘違いしてしまう士業がいるのでしょうか。国家試験まで受けて開業した士業が、キックバック目当てに顧問先へ何かを売りつけようとしているとしたら、こんなに寂しい話はありません。

キックバックとは関係者に対して利益を還流させる行為で、裏で動くお金は正常な意思決定を歪めかねないものです。また、キックバックを得るために、顧問先に保険を売りつけるなんてことをしたら、私の信用に関わります。そもそも、キックバックを条件にするということは、裏金に頼らなくては売れない保険と自白しているようなもの。そんな程度の商品やサービスを顧問先に勧めるわけにはいきません。

取引コストが高騰する

以前、弁護士へある会社を紹介したことがあります。無事に顧問契約を締結することになり、当時抱えていたトラブルも迅速に解決することができました。この時、弁護士からは事後にお礼の連絡をいただきました。私からしたらそれで十分で、キックバックなんて不要(そもそも、弁護士から紹介料をもらうのは規程違反になる)。顧問先の困りごとは解決したし、弁護士は顧問契約を締結することができたし、そして私は顧問先へ良い専門家を紹介することができて、まさに三方良しの取り組みとすることができました。

一部の士業ではまた違った慣習が存在するそう。同業者から紹介を受けた場合には、数か月分の顧問料相当額を紹介料として支払う人もいるのだとか。ある士業のFacebookで、「元職員に顧問先を紹介してもらったので、鰻に商品券を付けてお返ししました」といった投稿を見かけたことがあります。これまで私も何件か紹介を受けていますが、こうした紹介料は一回も支払ったことがありません。そのせいで「非常識な奴だ」などと思われていやしないかと心配になることもありますが、こうしたキックバックは悪弊だと考えているので業界の常識とやらに染まるつもりはありません。

キックバックのような表に出てこないお金のやり取りが横行すると、取引コストが高騰していきます。冒頭の保険会社の場合であれば、顧問先の従業員が支払う保険料に、キックバックの原資が含まれるわけです。

封筒に入った一万円札と電卓

自分の職業倫理をしっかりと持ちましょう

正常な商行為に無駄なコストを上乗せするもの

以前にあるプロジェクトに関わっていた際、某関係者が取引先からキックバックを得ていたことが判明しました。それとすぐにわからないような名目で個人で請求書を作成していたのは身を守るためだったのでしょうが、見る人が見れば一発で見抜かれてしまいます。地域を食いものにするような行為をして、今はどこで何をしているのでしょうか。組織で起こる不祥事はたいていは異性関係とお金に関するもの。そういえばこの人物も職場内での不適切な人間関係から始まって、徐々にお金に関わるトラブルを引き起こしていったように記憶しています。

キックバックやリベートとされるものは名称に関係なく、正常な商行為に無駄なコストを上乗せするもの。法令や規定に違反していないとしても、自分の職業倫理に照らし合わせて受け取るべきかどうかを判断しましょう。さらにそれが顧問先を巻き込むとなれば、自らの信用にも関わりかねない行為だと自覚する必要があります。私だったら、キックバックを得て喜んでいるような専門家とは付き合いたくありません。


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