何のために仕事をするのか
私はタダ働きというのが大嫌いです。「今回だけ無料でお願いします」とか、「ご馳走するからサービスして」などと言われると怒りを覚えるくらい。何のために仕事をしているのかと聞かれたら、迷わず「お金のためです」と答えることができます。
お金のため
何のために仕事をしているかというと、生活をするためというのが一番大きいです。家族で生活し、息子の学費を支払っていくにはお金が必要。そのために仕事をしています。こうはっきり書くと白けてしまう方もいるかもしれませんが、人は霞を食べて生きていけないわけで、私は隠さずにお金のために仕事をしていると言い続けています。
以前にあるプロジェクトに関わっていた時のことです。契約更新の時期に差し掛かってきたので、先方の偉い人と協議が続いていました。その時に言われたのが「まさか、岡田さんはお金のことなんて気にしないですよね」という一言。私はぞっとしてしまいました。無償のボランティアをしているつもりは全くなくて、それどころかそれなりの報酬をいただけるからそのプロジェクトに関わっていたわけです。まるでお金の話をするのが汚らしいとでもいうような発言に驚いてしまいました。その発言をした人はもちろん雇われる立場でけっこうな額の月給を取っていたので、偽善も良いところです。
独立開業したのであれば、仕事と報酬は直結します。雇われる立場であった時のように、昨日と同じことをしていても黙って給料が振り込まれるなんてことはありません。自分から積極的に営業し、案件をいただいて、その対価として報酬が入金されるのです。契約と報酬は不可分のもの。お金の話をするのに遠慮は不要です。
人生を有意義にするため
報酬をいただいた上で、仕事は人生を豊かなものにもしてくれます。自分が社会の一員であることを認識させてくれもします。
以前に日本を代表するような繁華街にビルを持つオーナーにお会いしたことがあります。失礼ながら見た目はいかにも競馬場などにいそうな雰囲気の方で、莫大な資産を持っているようにはまったく見えませんでした。その方で印象に残っているのがどこか呆然としたような表情を常にしていたこと。不動産管理ばかりをしていて、他に仕事はないそう。不動産管理といっても委託している不動産会社があるので雑務に追われることはありません。日常に刺激が足りないと、表情に現れてしまうものなのだなぁと勉強になりました。
資産を持っていても、それだけで人生が有意義になることはありません。社会に価値を提供して必要とされることで、人生が豊かになると信じています。
江戸時代から続く家業を投資ファンドへ事業譲渡したとき、「さて、この先何をしようか」と呆然としてしまいました。まさか家業を離れる時が来るなんて考えたことは無かったので、いざひと段落するとその先の道が拓けていないことに気づいてしまったのです。しばらくふらふらしていましたが、翌年夏に日本経済新聞に掲載されていた求人広告をきっかけに中小企業支援家に転身することなりました。何がきっかけになるかわからないものですし、まさか私が支援する側に立つことになるとは今考えても不思議な気がします。
おかげさまで中小企業支援家に転身して9年目に入りました。よく考えたら、家業で代表取締役を務めていた時間よりもはるかに長く今の仕事をしていることになります。経営者に使っていただけることに感謝しつつ、働く喜びを実感する日々です。
息子には家業という縛りはない
息子には家業という縛りはないので、好きな人生を歩んで欲しいと思っています。小さい時からそのことは言って聞かせていて、二人で出かけた時などには「常に将来やりたいことをいくつか考えておきなさい」と伝えてきました。お父さんには茶わん屋があったから、そんなことを考えるなんてできなかったとも付け加えて。
そんな息子も中学三年生。小中高と内部進学した私と違って、受験の季節がやってきました。自分の進路を自分で切り拓くことができる幸せを理解して欲しいものです。ちなみについさっき、LINEが入って「明日着けていく腕時計がない」とのこと。明日は僕の腕時計を着けて行ってもらいましょう。
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