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コラム

中小企業支援における不都合な真実

中小企業支援に携わるようになり、9年目に入りました。金融機関出身でもなければ公務員出身でもない私からしたら、中小企業支援に関わる人々には違和感を覚えることもしばしばです。中小企業支援における不都合な真実について書いてみます。

事業者の要望があって、初めて支援が生まれる

以前に参加した会の参加者は、支援する側の人ばかり。事業者は一人もいませんでした。あれこれ議論するなかで、「こうして支援していこう」みたいに発言している人がいてゾッとしてしまったことがあります。支援が必要かどうかは事業者が決めることですし、何を求めるかも同じ。必要かどうかもわからないのに支援側が先走ってしまうのは贔屓の引き倒しになりかねません。事業者の要望があって、初めて支援が生まれる。中小企業支援の大前提です。

また、支援側同士が名刺交換するとそれだけで「連携」が成立するそう。そこに事業者は存在しません。どこかの誰かの成果にカウントされる連携とやらは、事業者に何の関係があるのでしょうか。

中小企業支援業界にはこうした面が多々見られると思っていて、経営に携わったことがないのはもちろん、民間企業に勤めた経験もなければ創業したこともない人々が、上から目線で支援らしきことに取り組みがちです。ひどいものになると事業者の都合など関係無しに、支援メニューを押しつけようとすることもあります。ピント外れな取り組みであることもしばしばで、事業者にとっては支援どころか無駄な手間が発生してしまうこともあります。

「魔法の杖」は存在しない

誰かから支援やコンサルティングを受けたからといって、中小企業や創業間もない企業がトヨタやユニクロのように成長することは確約されません。誰もがわかっていることですが、そもそもの支援が支援になっていないかもしれないという「不都合な真実」です。

専門家らしき人に教科書に書いてあるようなことばかりを説明されたり、どこかの組織の都合で企画されたセミナーを受講したりしても売上アップに繋がるとは限らないのです。こうした支援らしきものの主役は事業者でないことがほとんど。経営者には、さまざまな支援らしきものが自分の役に立つかを冷静に見定めて利用する目利き力を養うことが求められます。

中小企業支援に「魔法の杖」は存在しません。そんなものがあれば、多くの専門家らしき人々は自分で起業して大企業を率いているはず。先日も経営コンサルティング業の廃業が増えているという記事が話題になっていましたが、せいぜいそんな程度の人々が支援らしきことに従事しているのがこの業界なのです。

りんごの木

成果という果実を掴み取ることができるのは経営者だけです

行動するのはあくまで経営者

じゃあ私は何をしているかというと、基本的には私が何かをすることはありません。行動するのはあくまで経営者で、成果を掴み取るのも経営者です。知恵とアイデアを提供して行動するように促しますが、実際に行動するかどうかは経営者次第です。

ある老舗企業の経営者が銀行融資を受ける必要に迫られました。見栄を張って有名な銀行ばかりを頼ろうとする経営者に提案したのは、信用金庫を巻き込むこと。ここまでは良かったのですが、経営者は「どこの信用金庫に行けば良いですか」と聞いてきます。そんなことは自分で調べることです。ネットで検索すれば1分もせずに近隣の信用金庫の支店がわかることでしょう。私は「自分で調べてさっさと行動してください」とお伝えしました。冷たいようですが、支援にならない支援はすべきでないと考えています。

ありがたいことにこの9年間、多くの経営者と対話をさせてもらってきました。さらに直近の3年間はそれなりの報酬をいただいて顧問や社外取締役としても使ってもらっています。無料で相談らしきことができる機関がいくらでもあるのに私を頼ってくれているのですから、責任は重大。いつも緊張感を持って経営者と向き合うようにしています。

私の中小企業支援の原体験は、地方中小企業の経営者として商工会議所の相談窓口に赴いた時の経験です。決算書を眺めて「人件費が高いので減らすべき」などと欠点を指摘されるばかりで、売上アップのヒントは得られませんでした。かつての私のような経営者を生み出さないためにも、私は私らしく中小企業支援に携わっていきます。


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