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コラム

水が漏れている穴を塞いでいくのが経営者の役割

経営者に知恵やアイデアを提供するのが私の仕事です。でも商売に必要なのは凡事徹底。やるべきことをやった上で、飛び道具を利用して欲しいと考えています。

凡事徹底

ある顧問先で新入社員向けの説明資料が用意されていないことが判明しました。長年在籍している従業員には当たり前のことであっても、入社したばかりの従業員にとっては知らないことばかりであるはず。会社の成り立ちや商品知識、接客スキルなどは暗黙知としてしまいがちですが、売上の底上げを図るには形式知にして共有する必要があります。不足しているものを理解した会社はさっそく対策に着手することに。まずは動画で商品情報を発信することから始めることになりました。

売上アップを目指すというと「SNSで発信してバズらせる」「アイデア商品を発売してメディアに取り上げてもらう」といった派手な施策に目が行きがちです。状況によってはこうした手段を選ぶこともありますが、それ以前にそもそもの「凡事が徹底できていない」ことがほとんど。すぐに売上を増やしたいのであれば、水が漏れている穴を塞ぐことの方が先です。

私の使う「営業」という単語の意味は、見込客と関係性を構築し困りごとを聞き出すこと。見込客の声に耳を傾けずに、自社の商品を買ってもらおうと一方的に迫るのはただの押し売り。売上増どころか見込客に何より嫌われてしまう行為です。まずは見込客と関係性を構築し、困りごとを聞き出す必要があります。その後に課題解決の手段を提案できれば、ようやく商談を始めることができます。

その営業量が足りずに売上減に悩んでいる、ある会社の話です。経営者と対話していると、そもそもの営業量が足りていないことがすぐに判明しました。営業量が足りていないので、売上が思うように伸びないのは当たり前のこと。新商品を用意したり、値引きをしたりする前に必要なのは見込客と対話することです。「不都合な真実」を指摘されてしまった営業部長は黙っているだけ。飛び道具に頼る前に、やるべきことをやらねばなりません。それまで個々の担当者に任されていた営業活動は、社長に進捗を報告する仕組みに改められました。まずは日々の訪問数を増やすところから挽回しようとしています。

懇親会での質問

先日のセミナー後にある参加者から質問されました。「岡田さんは元茶わんやだが、製造業などの会社にはどのような支援ができるのか」というもの。うれしい質問です。私が答えたのは「商売の本質はどの業種でも同じ。見込客の困りごとを聞き出し、その解決手段を提示するだけ」「提示する解決手段は見込客の期待を半歩でも上回るものにする」というもの。

実際に私は半導体関連企業やロボティクス関連企業の支援もしています。技術はわかりませんが商売の本質は同じ。水が漏れている穴がどこにあるのかを探し、その穴を塞ぐ方法を経営者との対話を通して提供しています。

採用などで「業界経験者に限る」といった条件を見かけることがありますが、意味のない一文だと思っています。事業の持続可能を高めるには不断のイノベーションが欠かせず、そのためには異分子を積極的に取り入れる度量が必要です。多様性とは綺麗事ではなくて事業を存続させるために必要な視点なのです。

洗面台の下の配管

まずは水漏れを止めましょう

経営に「魔法の杖」や方程式は存在しない

当たり前のことをできていないのに、一足飛びに何かをしようとしても無駄です。ある経営者は従業員との対話を怠るようになっていて、それでも売上を増やしたいと願っていました。自社の従業員と対話せずに、私が提供する知恵やアイデアでなんとかなると考えているなら大間違い。なんども従業員との対話を増やすように促しましたが、あれこれ述べ立てて実行に移さないまま時間が過ぎていきました。経営者が現実から目を背けている限り、業績が改善することなどありません。

世の中にはそれらしいキラキラとして見える成功事例に溢れていますが、そんなことに目を奪われる前にすべきなのは凡事徹底です。朝礼でその日の行動予定を確認する、日報などのレポートで成果を報告する、他部署の人手が足りなければ手を挙げて手伝う。そうした当たり前のことを当たり前にできていない会社は弱いです。まずは水が漏れている箇所を特定し、穴を塞ぐことが経営者の役割です。


ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています

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