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コラム

経営者との間合いの取り方

中小企業支援に携わっているといっても、経営者とベタベタ接するだけが支援ではないと考えています。時に適切な間合いを確保することも事業の成長には必要です。このことが理解できていない専門家らしき人々は次から次へと補助金を紹介したり、一方的なアドバイスを繰り返したりしてしまい、経営者の思考力を奪ってしまうことになります。

経営は自己責任

中小企業支援に携わっている私の姿勢は少し特殊なのかもしれません。補助金や制度ばかりを熱心に勧めることはありませんし、書類の作成を手伝うこともありません。ネットで調べたらわかることを教えることもありません。これらのことが支援にならないとわかっているので、たとえ経営者に嫌われようが手掛けないことにしています。

例えば経営者と資本政策について議論している時、「金融機関にはこういったあらすじで事業性を示したらどうか」「資金繰り予測表がこうだから、次はこういった金融機関から融資を受けたらどうか」という話はします。でも、その先は経営者の仕事。実際に金融機関を選んで連絡をしたり、事業性を説明するのは経営者自らでないとできないことです。私が金融機関を選んで連絡先を提示することなんてありませんし、経営者の代わりに金融機関の担当者と対峙することもありません。

そんなことまで私が手掛けてしまうと経営者は思考しないようになってしまい、「次は何をしたら良いですか」「わからないのでできません」などと口にするようになります。それでは贔屓の引き倒しになるだけ。時には心を鬼にし、経営者とは適度な間合いを取るようにしています。

顧問契約は繋がる権利を買ってもらっている

私が顧問契約をしている会社には、定期的に訪問することにしています。月に一回であったり、二回であったり。何か事件が起これば事前の取り決めに関係なく、先約を調整してでも飛んでいくこともあります。先日もある顧問先からトラブルが発生したと速報が入ったので、まずは全体像を把握するために駆けつけたばかり。直前に定例の訪問を終えたところでしたがそんなことは関係ありません。幸い、トラブルの初期対応のお役に立てたようでほっとしています。

そんな私が経営者にお伝えしているのは顧問契約の報酬は訪問や個別相談に対してではなく、私と繋がる権利にお支払いいただいているということ。作業や訪問の対価ではなく、社外の中小企業支援家と繋がりを保持するための対価と考えてもらっているのです。

この点を強調しておかないと、せっかく顧問契約を締結してもらってもミスマッチになりかねません。「岡田と話していれば売上が増えると思っていた」などと勘違いされたら笑うに笑えません。私はあくまで経営者の思考と判断を助けるための道具に過ぎません。経営に「魔法の杖」や方程式なんてあるわけがないのに、私と話すだけで何かが起こるなど妄想もいいところ。会社を動かすのは経営者自身です。

茶碗と茶杓と棗

そういえば茶道も「間」を意識しますね

行動しない経営者とは距離を取る

経営者とあれこれ対話しているとそれだけで満足してしまう人がいます。その後、いっこうに行動が伴わないのです。こうなると危険で、私は少し距離を取るようにして、次の行動に自ら移るように見守ります。万全の準備を整えようとしたり、みっともない思いをしたくなかったり、気持ちはわかりますがそんなことで行動を躊躇するのは時間を無駄にしているだけ。ある程度の方向が定ったら行動あるのみです。誤解を恐れずに言えば、「気合い」です。もっともらしいことばかりを口にしていても、気合いがなければ行動が伴いません。

ある創業間もない会社の経営者は何かあるごとに打ち合わせを繰り返し、さまざまな資料を作り直していました。まるでそれが仕事であるかのように勘違いしているようでした。そうしている間にも資金は流出していくわけで、まさにタイムイズマネーという状態。こんなときに必要なのは見込客との関係性構築であり、彼ら彼女らの抱える困りごとの収集のはず。それらしい仕事みたいなことをして自己満足に陥るようになったら危険。そうした経営者には諫言も辞さずにお話し、距離を取ることにしています。厳しいようですが、私自身も地方中小企業の経営者であったからこそ、何よりも行動を重視しています。


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