プレゼンでの悪癖
先日、経営者のプレゼンを聴く機会がありました。皆さん熱心に取り組んでいるのですが、残念に感じるポイントもありました。プレゼンでの悪癖について書いてみます。
スライドが無いと話すことができない
多くの人がパワーポイントに頼り過ぎです。パワポ資料無しでは話すことができなくなっているようです。ある経営者は質疑応答の際にも、質問に応じて適切なスライドを探している始末。質問を受ける度にスライドをあれでもないこれでもないと探しているので、待たされている方はほんの数秒から数十秒の間であってもすっかり白けてしまいます。
霞ヶ関で働く人が作成する資料は「曼陀羅」と呼ばれることがあるそう。余白無くびっしりと情報が詰め込まれていて、読み手の都合など一切考慮されていません。あんな資料は誰かがアリバイ作りのために作成するもの。経営者が支援者を増やそうとプレゼンをする際には、ぐっとシンプルなスライドで十分なはずです。さらに言えば、スライドなんか無くても思いは伝えられずはず。「プレゼンをするからにはパワポ資料を用いなければいけない」なんて妙な常識が蔓延してしまっているようです。
もちろん私も講演の際にはパワポ資料を用います。でも一言一句、話す内容をスライドに盛り込むようなことはしません。話を聴かせたいのか、スライドを見せたいのか。私は前者を優先しています。
持ち時間を超えて話し続ける
持ち時間を守ることができる経営者はほとんどいません。ある経営者は事前に持ち時間を通知しておいたのに、超過しても平気で話し続けようとしていました。そうした経営者に限って自分が話してばかりで、相手の言葉に耳を傾けようとしません。自分の考えを届けたいという思いが先行し、思考に余裕が無くなってしまっているのでしょうか。
1日24時間、1年365日はすべての人に平等に与えられている資源です。約束の時間に遅れたり、持ち時間を超過して話し続けたりするような行為は他人の資源を奪っていることになります。たった3分であっても出席者が10人いるのであれば30分間奪い取っていることになります。時間は有限。他人の時間を預かる以上は持ち時間にしっかりと収まるように話すべきです。
私は自分が話す前には主催者に持ち時間を確認します。「何時まで話せば良いですか?」「質疑応答は込みですか?別ですか?」といった具合。大抵の主催者が「どれくらい話しますか?」などと質問に質問を返してくるのには困ってしまいます。私はあくまで呼ばれて話すだけ。持ち時間は主催者に指示してもらいたいのです。
ある知人は審査などの場で持ち時間を1秒でも超過した人は落とすことにしていると宣言していました。私も同じ考えです。同じ条件で競っているのに他人の時間を平気で奪うような人には何かを託したくはありません。厳しいようですが、それくらいの緊張感を持って自分の持ち時間を守りましょう。
自己紹介が冗長
ある経営者の持ち時間は15分間でした。ところがそのうち自己紹介が10分を占めていたのには呆れてしまいました。何を聴いてもらいたかったのかよくわからないプレゼンになったのは言うまでもありません。肝心の事業性についての説明が駆け足になってしまい、消化不良のうちに終了。本人は承認欲求を満たすことができたのかもしれませんが、聴かされる方はうんざりでした。
またあるセミナーを受講したときには講師の自己紹介が全体の2/3ほどの時間を占めていました。「この会社に務めていた時にはこんな研究に携わっていた」などという自慢が延々と続くのです。もちろん本題は駆け足で話すことに。自己紹介に時間を割きすぎるのは効率が悪いどころか、みっともないことなのです。
そんな経験をしている私は、自分の講演では自己紹介を後回しにすることにしています。本題をしっかりとお話しした後に、時間調整用のコンテンツとして自己紹介をするようにしています。最初は勇気がいることでしたが、試してみると私自身も本題のトークに集中することができて快適なことに気付きました。自分のことを延々と語り続けるほどみっともないことはありません。自己紹介は駆け足で済ませるくらいが逆に興味をそそり、良い印象を残すのではないでしょうか。
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