まだ何者でもないのに考えすぎる人々
創業間もない会社の経営者やこれから創業しようとしている人は、いわば「まだ何者でも無い」状態です。
情報発信を怠る
中小企業支援に携わっていると事業者に情報発信するように促すことがあります。特に創業間もない人にとっては、まず自分を知ってもらうことが何よりも重要。どこの誰かわからない人から何かを購入しようとする人などいないからです。
情報発信で最も重要なのは継続して手掛けること。ほとんどの人が途中で挫折してしまうからこそ、継続できるだけで競合に差を付けることが可能になります。もう一つ重要なのが自己開示。誰でも発信できる内容を垂れ流したところで「知ってもらう」ことには繋がりません。例えば、士業であれば法改正情報や補助金情報なんていうのは誰でも発信できる内容で、そこに「個性」が入り込む余地はありません。自分がどこの誰で、どんなことを考えているかをさらけ出すのが先です。必ずしも製品やサービスに関わることだけを発信する必要などなくて、経営者の人柄や仕事に対する向き合い方が伝わるコンテンツは見込客に興味深く閲覧してもらえることでしょう。
ところがこの自己開示をためらう人が多いのです。「個人情報が、、、」「炎上したらどうしよう」「ネット上に永遠に残るのだから、、、」などと躊躇して、自らをさらけ出そうとしないのです。私からしたらあなたのことなど誰も気にしていません。だからこそ、まず自分から自己開示する必要があります。まだ何者でもないのに先のことを心配していたら、いつまでも一歩を踏み出すことはできません。
私はこのブログなどで情報発信していて、徹底して自己開示をしているつもり。でもこれまでのところ、リスクらしいリスクにさらされたことはありません。もちろん、一線を越えないように気を遣っていて、例えば誰かに揚げ足を取られかねないような発信はしていません(たぶん)。
情報発信をしないというのは今時ありえません。検索して存在を確認できないと、それだけで信用を得ることが困難になります。
営業を怠る
営業とは見込客の困りごとを収集する行為です。そのためにも、まずは関係性を構築して、困りごとを打ち明けてもらわなければなりません。その後にようやく課題解決の手段として自社商品・サービスを提案することが可能になります。この過程をすっ飛ばして闇雲に「売ろう売ろう」としても嫌われるだけ。電話営業で必要でもない複合機を売りつけられそうになって不愉快な思いをした人もいることでしょう。こちらの困りごとを把握しようともせずに、自分たちの売上だけのために何かを押し売りしようとしてきたから不愉快な気持ちになるのです。
さて、営業というとそれだけで忌避する経営者がいるから不思議なものです。おそらくこうした経営者は営業を「相手に必要とされていないものを無理に販売しようとする行為」と誤解しているのでしょう。相手に嫌われるとわかっていて率先して行動する人などいるわけがありません。
繰り返しになりますが、営業とは見込客の困りごとを収集する行為。「最近、様子はいかがですか」「何かお役に立てることはありますか」「何かお困りのことはないですか」と間合いを詰めていけばいいのです。営業と聞くだけでのらりくらりと回避しようとしたり、あわよくば外注しようとしたりするのは私からしたら経営者失格。まだ何者でもない段階にあるのであれば、経営者みずから営業に駆け回ってもらいたいものです。
権利ばかりを主張する
創業間もない事業者を誰かに引き合わせようとする時、「NDAを締結してくれないと話せることがない」などと言われることがあります。確かにその通り。上場企業であっても平気で創業間もない事業者を食いものにすることがあるので、身を守るための配慮は必要です。でも過度に機密保持に気を遣うと、どことも繋がることができなくなってしまうのも事実です。
私はまだ何者でもないのであれば、まずは繋がることを優先すべきだと考えます。配慮すべきことには配慮しつつ、まず自己開示は「小さな者」からしないことには話が進まないからです。
権利を大きな声で主張するのは相手とそれなりの関係性を築いてからにしましょう。まずは「小さな者」として相手の懐に飛び込み、間合いを詰めていくのが先です。商談が進展するようであれば、そこで契約書上の権利を主張するなどすればよいのです。
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