労災保険に特別加入した
個人事業主の最大のメリットは「自由」であることです。一方で、雇われる立場と違って公的な制度で守られる機会は圧倒的に少なくなります。ところが最近、個人事業主にも労災加入の可能性が高まる制度改正がありました。
個人事業主であることのリスク
私は個人事業主として中小企業支援に携わっています。法人化していないので社会保険には加入しておらず、他に労災保険や雇用保険も適用外。ところがこの11月からフリーランスを保護するために労災保険の加入要件が拡大され、私のような個人事業主として活動している中小企業支援家も加入できることになりました。
つい先ほどまでも顧問先の経営者とお話ししてきました。ちょうどイベントに出展しているので会場を見させてもらいながらの対話。順調に成長しつつある新規事業について議論してきました。
今日のように対話だけで終わることもあれば、時には作業をお手伝いすることもあります。例えば蛍光灯を替えたりだとか。「労災保険に加入していないのでお手伝いできません」とも言えず、手が足りなくて待っていただいていたのであれば、つい脚立に登ることになってしまいます。万一、怪我をしてしまったら補償を得られない立場。高所恐怖症というわけではありませんが、実は脚立に登るたびに怖い思いをしていたのです。
もちろん、顧問先へ向かう道中にもリスクは少なからず潜んでいます。駅の階段から落ちただとか、自転車に乗っていて転んだだとかといった事案はかつての家業で実際に見聞きしたことがあります。私もいつ同じようなことに巻き込まれても不思議ではありません。
労災保険とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度。家業で働いていた時や、その後に転職して某自治体の外郭団体に雇われていた時はもちろん加入していました。当時は加入するのが当たり前で何のありがたみも感じていませんでしたが、個人事業主になってすべてを自分が管理する立場になると保護してくれる制度のありがたみを実感するわけです。保険とは予期せぬリスクへの備え。労災保険に加入できたことで、これまでよりも少し安心して顧問先に向き合えるようになりました。
社会保険労務士賠償保険には加入していない
社会保険労務士賠償保険というものがあります。社会保険労務士が何かミスなどをして損害賠償請求をされたときに補償してくれるものだそうです。
私は社会保険労務士の屋号は掲げているものの、いわゆる定型業務は手がけていないので社会保険労務士賠償保険には加入していません。ただ、もし将来、定型業務を売り上げの柱に据えるのであれば保険加入は必須でしょう。何かの手続きをミスしてしまい、事業者が本来受け取ることのできた金銭を受け取ることができなくなってしまったら賠償する必要があるからです。
補助金助成金関連の業務は事業者とトラブルになりやすいと聞いたことがあります。受け取れると思い込んでいたものが受け取れなかった、受給後に返還を命じられた、虚偽内容の書類で提出したなどといった事案を耳にするたびに、こうした業務は手がけたくないと強く思います。
一番の商品は知識や技術ではなく、自分自身
個人事業主にとって一番の商品は知識や技術ではなく、自分自身です。創業間もない頃は、その一番大事な商品の管理を疎かにしがち。例えば健康診断を受けなかったり、睡眠時間を削ってまで仕事をしたりしてしまうのです。私はこうした働き方に強い違和感を持っていて、そこまでしないと価値を提供できないというのならば、何かが根本的に間違っているのではないかと思います。
ある創業間もない会社の経営者が、睡眠不足で従業員に当たり散らしているのを見かけたことがあります。百歩譲って睡眠時間を削らなくてはいけなかったとしても、せっかく創業間もない会社に入社してくれた従業員に理不尽な態度で接しているようでは先が知れてしまいます。そうしたギスギスした雰囲気は支援や協業を検討している人には敏感に伝わってしまうもの。経営者がしっかりと体調を整えるのは健全な経営の第一歩です。
保険などの制度を活用するのも重要ですが、本人の意識が低ければどうにもなりません。自分自身が一番の商品であると認識できている人は案外少ないようで、知識や技術ばかりを訴求しがち。でも知識は誰でも勉強することができますし、技術も訓練で身につけることができるはず。他の誰かによる替えがきかないからこそ価値が高まるわけです。自分の体がどれほど大切なものなのか、改めて考えてみましょう。
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