接客をした経験が今でも生きている
家業に入社直後の3年間は百貨店の自社ショップで販売員をしていました。この時に接客をした経験が今でも役に立っています。
百貨店の売場に3年立っていた
家業に入社した直後の3年間は百貨店内の自社ショップで販売員をしていました。最初は包装の仕方から教わり、接客のイロハを学ばせてもらいました。回転包装や荷造りは毎日幾度となく手を動かしていたので今でも忘れていないはず。ただし、リボンはまったく覚える気がなかったので百貨店の女性社員にいつもお願いしていました。
その百貨店は出入りの業者にいろいろと注文が多いと有名で、確かに百貨店社員にあれこれ注意されることもたびたびでした。百貨店ブランドのクレジットカード加入のノルマを課されたときには驚いたものです。商品を納入したからには本来は百貨店社員が販売すべきなのに、なぜか出入りの業者の我々が売り場の販売員の相当数を占めていました。当時すでに百貨店社員のリストラが繰り返されていて、現場の販売力が目に見えて低下していくのを目の当たりにしたことも。百貨店業界が最後の一瞬輝いた数年間を売場で過ごすことができたのは、私にとっては幸運なことでした。
毎日売場に立っているとさまざまなお客さんがやってくるわけで、それまで狭い世界で生きてきた私にとっては毎日が鍛錬の連続。理不尽な要求をする人もいたりしてなかなか刺激的で、一日数回から数十回の接客で鍛えられました。あっという間の3年間は面白くないことも多々ありましたが、対人スキルを身につけるための貴重な機会になったと今では思えています。
展示会での営業支援
先日、関与先が展示会に出展するというので同行し、現場で営業支援をさせてもらいました。展示会にせっかく出展するならできるだけ多くの方と名刺交換してお話ししなくてはいけないのですが、関与先の経営者はいまいち間合いの詰め方がわからないご様子。私が通りかかる人の足を止めて、経営者に引き継いでお話ししてもらうというパターンで何組もブース内に誘導することができました。事業会社という形態を選んだからには見込客との関係性構築を避けることはできません。今回の展示会出展の成果を名刺交換した数だけで捉えること無く、どれだけ「営業」に繋げることができたかで測ってもらいたいものです。
経験がないと展示会会場とはいえ「こんにちは」とか「⚪︎⚪︎をお見せしています」などとお声がけするのは勇気がいることです。でも私の場合は接客の経験があるので慣れたもの。昔、売場に立っていた頃を思い出しながらお声がけを続けていました。
百貨店の売場や展示会会場に立っている時の私は素の自分ではなく、販売員や営業担当者を演じている感覚でいます。普段の自分よりギアを数段上げて、見込客に気づいてもらえるように立ち回っています。このギアの入れ替えができないと、見込客からは「つまらなさそうにしている」だとか「愛想が悪い」などと見えてしまいがち。気持ちを盛り上げて、見込客に見つけてもらえるように努めるのです。
お茶会の受付
今日は福岡市民大茶会の日。流派の受付でお客様をご案内するお手伝いをしてきました。油断していたら朝の着付けに手間取ってしまい、集合時間ギリギリになってしまいました。さて出かけようかと思ったら帯が解けかけていて焦りました。グダグダな一日のスタートになってしまいましたが、それでもいざ受付に座ったら自分の役割を把握し、「演じる」わけです。
定員に限りがあるので断らなくてはいけない時や、お点前の時間が延びて案内が遅れた時などには私のせいではなくても精一杯お詫びをします。ここで逃げたらクレームなどに発展するのでさっさとガス抜きをしてしまうのに限るのです。こうした判断ができるのも接客の経験があったから。朝8時から16時まで、与えられた持ち場でベストを尽くしました。
接客の仕事というと特殊に見られることもありますが、私にとってはまったく知らない方と一期一会の精神で向き合うことを教えてもらえた貴重な仕事でした。中小企業支援の現場や、趣味の繋がりでもその経験が生きているのはおもしろいものです。
そういえば丸一日、着物・袴姿だったのは今日が初めて。大きく着崩れることなどなかったとほっとして帰宅したら、帯が大きく解けかけていたのには笑ってしまいました。まだ練習が足りないようです。
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