自分ばかりが話していないか
人は自分の話を誰かに聞いてもらいたいもの。でも自分ばかりが話し続けるとコミュニケーションが成り立ちません。ぐっとこらえて、他人の話に耳を傾ける余裕が必要です。
個別相談の主役は経営者
経営者と私の個別相談の様子を見ていた人に、「経営者ばかりが話していたじゃないか」と感想を伝えられたことがあります。私が知恵やアイデアを提供するために熱く話してばかりいると想像していたようで、経営者の話す時間が多かったことに驚いていました。
まさに私が目指しているのは経営者に話してもらうことです。ろくに話を聞かずに私がありもしない「魔法の杖」を授けるなんてことはありません。まずは話してもらうところからすべてが始まるわけで、初回は私が話すのは最後にほんの少しだけということがほとんどです。
それだけで満足してしまう人もいれば、2回目、3回目と対話が続いて売上アップのヒントを探り続けることもあります。いずれも変わらないのは主役は経営者だということ。私はあくまで聞き役で、例えて言うなら「踏み台」みたいなもの。私の背中に乗って、手の届かないところにある成果を掴み取ってほしいのです。
自分だけが話し続けていないか
ある経営者同士の面談に同席させてもらった時のことです。面談というからには相手がいるのですが、一方の経営者ばかりが話し続け、面談相手がつまらなさそうにしていました。面談されているからと、時間いっぱい自分のことだけを話そうと考えてしまっていたようで、会話が成り立つ場面が少なくもったいないなと感じてしまいました。相手に質問する間を与えたり、質問に端的に回答するように心がけたり。お互いがお互いをよく知るための場にする工夫はいくらでもあったはずです。
またある専門家(らしき人)は経営者の話をろくに聞かずにアドバイス(らしきもの)をとうとうと語っていました。経営者は余計な口出しをせずに黙って聞いていましたが、終わった後に私にだけ、「ピントはずれのアドバイスだとわかっているので黙っていました」とうんざりした顔でこぼしていました。そんな専門家(らしき人)は自分の話に自分で酔っているだけ。そこにいるはずの経営者はいつしか見えなくなってしまっていたようです。
人は誰かに自分の話を聞いてもらいたいものです。だからといって自分だけが話していては会話は成り立たず、関係性も深まりません。自分の話は最小限にぐっと抑えて、相手に話すように促すくらいがちょうど良いのです。
ある会社のある部署で上司と部下の関係がうまくいっていないと相談を受けたことがあります。表面上の出来事だけを辿るとハラスメントのようにも見えたのですが、もっと深い部分に原因があるようでした。ヒアリングを重ねて分かったのが、部下の「頑張っていることを認めて、よくやっていると声をかけてもらいたい」という気持ちでした。どんなに仕事をこなしても上司に無視されているように感じられて、とても辛かったと言うのです。
その上司は自分の業務の都合ばかりを話して、部下の声に耳を傾けようとしていませんでした。原因がわかればなんてことのないように感じられますが、まさに関係性構築の根源的な問題です。人は自分のことばかりを話したがり、積極的に他人の声に関心を抱こうとしない生き物なのです。
飲み会でも同じ
私は飲み会でも自分だけが、ついたくさん話していないかを気にするようにしています。適度に全員が話せるように、会話を振ったり質問をするのが大人の振る舞いでしょう。特に幹事であればそうした気遣いが求められます。日程調整と店の予約だけをしてあとは知らないとばかりに白けた顔で席に座っているようでは幹事失格です。
年配の方がいるとさらに幹事の役割は重要。昔話を延々としだしたり、説教をしだしたら強権を発動する時です。幹事だからこそ割って入って話題を変えるくらいの覚悟が必要。何度かそうしたことをしたことがありますが、叱られたことはありません。誰かが嫌な思いをするくらいなら幹事が動けばいいのです。
人は自分の話を聞いてもらいたいもの。でもみんなが同じように振る舞っていては会話が成り立ちません。自分がしゃべりたい気持ちをぐっとこらえて、耳を傾けましょう。
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