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コラム

求められてもいない値引きをする必要があるのか

最近、立て続けに「値引き」について考えさせられる出来事がありました。顧客に求められてもいない値引きをしたり、当たり前のように値引きをし続けたりすることが必要なのでしょうか。

息子の予約を入れたら値引きされてしまった

先日、息子の髪が伸び放題になっていたので美容院を予約しました。私が切ってもらったところで自宅から近いこともあり、息子にも勧めてみたのです。私が先に切って会計をしようとした時のことです。「息子さんを紹介いただいたので〇〇%オフになります」と言われました。値引きをしてもらうつもりはありませんし、知人や友人に声を掛けて文字通り紹介したならともかく、息子の予約を入れただけで「紹介」とは大げさです。「値引きは不要なのでそのままでいいですよ」と申し上げましたが、押し切られて会計を終えることになってしまいました。値引きをしてもらったのに、なぜかモヤモヤを抱いてしまいました。今回のような場合、誰が得をしたのでしょうか。

求められてもいない値引きは顧客サービスでもなんでもありません。1円でも安いものを求める人は一定数いるのでしょうが、必ずしもすべての顧客がそうではないのです。仮に髪を切ってもらうのに1円でも安いサービスを求めるのであれば、美容院などに行かずに1/3くらいの価格で切ってくれる商業施設内のお店に足を運ぶはずです。わざわざ美容院を予約するくらいの顧客が求めているのは、安いお店よりも素敵に切ってもらうこと。多少価格が高くなるのは最初から納得していて、そんなことよりも良いサービスを提供してもらいたいのです。

ちなみに息子は次回以降もこの店で切ってもらいたいと大満足。私と同じような髪形になっていましたが、本人はそのことに気づいていないようです。

バッテリーを交換したからと値引きされそうになった

昨日、プロフィール写真を撮ってもらった時のことです。カメラマンさんが一生懸命に仕事をしてくれて私としては好印象。まだデータを受け取っていませんが、おそらく満足できる仕上がりになっていることでしょう。その帰りがけのことです。「バッテリーを取りに行ったりしたので少し値引きします」と言われてしまいました。私からしたら、バッテリーの交換にほんの少し時間が掛かった程度のことで値引きを求めるつもりはまったくありません。そもそも何かに不満を抱いたのであれば、値引きを要求するのではなく次回お願いしなければ良いだけのこと。「値引きは必要ありませんよ」とお伝えして、当初約束通りの報酬をお支払いさせてもらいました。

世の中にはカメラマンがバッテリーを交換したら、「待たされた」と言って値引きを要求する人がいるのでしょうか。そんな人がいるのだとしたら、少し空恐ろしい感じがしてしまいます。成果物に問題があるのならばともかく、些細な事をあげつらって値引きを求めるような人にはなりたくありません。

自営業の特権の一つは顧客を自分で選べることです。自分と感性の合う人を顧客として選ぶことが可能で、反対に感性が合わなければ「帰ってくれ」と言い放つことも可能です。雇われる立場であれば会社の方針に合わせてぐっとこらえなければいけないことも、自営業であれば無理に我慢する必要はありません。顧客の期待以上の価値を提供することが大前提ですが、顧客に媚びることなく相手を選ぶことも堂々としてしまえばよいのです。

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その値引き、本当に必要ですか

顧客に対等の相手として認められていない

かつての家業で働いていた時のことです。顧客台帳があったのですが、顧客ごとに値引き率が記載されていました。大きいとたしか30%引きの顧客もいらしたように記憶しています。こうした顧客からの発注があると、何も求められなくても会計時に値引きをしていたのです。他の会社でも同じようなことをしているのかもしれませんが、経営者の孫・子であった私には違和感しかありませんでした。「なんで言われもしないのに値引きをするのか」と感じてしまったのです。

求められてもいない値引きを慣行でし続けるというのは自己否定に等しい行為です。値引きしなければ買ってもらえないような商品を取り扱っているということで、顧客に対等の相手として認められていないということでもあります。

その値引きは本当に必要なのか。その値引きをしなくても選んでもらうためには何が欠けているのか。顧客に求められてもいない値引きをする前に、立ち止まって考えてみましょう。


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