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コラム

頭が真っ白になる経験をしたことがあるか

人は誰しも、頭が真っ白になるような経験をしているはずです。

高校のボート部

30年前になりますが、高校ではボート部に所属していて、2年生になってすぐの対校レースでは先輩方に混じってボートを漕がせてもらいました。頭が真っ白になったのはそのレースの時。全くイメージトレーニングができていなくて、なんだかふわふわとした感じのままスタートの瞬間を迎えてしまいました。結果は惜敗。先輩たちの最後のレースを勝利で飾ることができなくて、今でもたまに夢に出てくるような悔しい体験でした。

今であれば、自分たちが勝つイメージを丁寧に共有しておくとかいくらでも緊張を克服する手段は思い浮かぶのですが、当時はそんなことを考える余裕すらなく、ただレースに出るので精一杯でした。それなりに厳しいトレーニングを経て迎えたレースなのに、ほんの少しの差で破れてしまったのを情けなく思っています。

幸い、翌年の自分たちの最後のレースは圧勝することができました。今であれば負けた相手に敬意を持ちつつ勝利を噛みしめるのが当たり前なのでしょうが、当時はあまりにも盛大に喜んでしまった記憶があります。数年後にはそうした喜び方を自粛するようにOBからお達しが出てしまったので、今では見られない光景なのかもしれません。

話が逸れましたが、頭が真っ白になる経験をすると、自分が今どのような精神状態にあるのか客観的に把握しやすくなります。いつも通りなのか、それとも緊張しているのか、さらには緊張しているのに冷静なふりをしようとしているのか。たかが高校の部活の出来事ですが、その後の私の人生に大きな影響を与えた出来事です。

茶道の勉強会

今日は茶道の勉強会でした。いつものお稽古と違って数十人が集まり、他の教室の方々と一緒に勉強する機会でした。それなりに準備をして臨んだものの頭が真っ白になってしまう瞬間があり、まだまだ勉強が足りないなと痛感しました。さらには緊張して茶杓を持つ手が震えてしまう始末。単純に日ごろからの練習量が足りませんでした。

ただし、勉強会がどういった雰囲気であるのかは今日でよくわかったつもり。次回以降も出席させてもらえるのであれば、今日のようなことにならないよう自分をコントロールしていきたいと思っています。普段のお稽古と違う場で初めて会う方々に囲まれて、頭が真っ白になってしまうとは情けない限りです。

そういえば、講演に呼んでもらった時は本番で万が一にも頭が真っ白にならないように早めに会場に入るようにしています。主催者が準備している横で演壇に上がらせてもらい、どういった場所でお話しするのか事前にイメージトレーニングをするのです。人前で話す事は決して得意ではありませんが、自分なりに工夫をして今まで乗り切ってきました。

こうして仕事では一手間をかけているのに、今日の勉強会は全く油断していました。準備不足ですね。良い教訓になりました。

白い壁

頭が真っ白になる経験をしたことがありますか

代表取締役をしていた5年間

最後、投資ファンドに事業譲渡した家業の代表取締役を5年間務めていました。日々それなりに事件はありましたが、頭が真っ白になったようなことはゼロ。新聞に掲載されるレベルの不祥事が発覚したり、銀行にいじわるをされたりしたこともありましたが、泡を食うようなことなく粛々と対応できました。

それはもちろん私のおかげではなく、従業員がきっちりと実務を回してくれていたからです。最後の最後の日まで浮き足立つことなく、なんとか事業譲渡の日を迎えることができたのも、過去の経営者と従業員が築き上げた、地に足がついた仕事をする文化があったから。経営者一人でできることなど何もなく、文化があったからこそ5年間をやり過ごすことができたのです。

頭が真っ白になるのは準備不足が原因のはず。良き従業員の先輩方に恵まれたおかげで、そんなことにならずに役割を果たすことができました。たまに、またかつての家業に関わる気はあるのかなどと聞かれることがありますが、答えは「あり得ない」の一択。経営者を支えてくれた幹部達は、投資ファンドに不要と判断されて新会社に移籍できませんでした。彼らなくして私が何かをできるとは思えません。その後の新会社がどうやら苦戦し続けているのは、人材難も一つの要因でしょう。今後、かつての家業に関わる自分を想像することができません。


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