地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

050-3557-7157

コラム

士業マーケティング 生きる場所を確保する

このところ、創業や独立開業について考えることが多いです。士業が独立開業するということは、生きる場所を確保しようとする試みでもあります。

雇われるリスク

独立開業しようと考える人には「雇われるリスク」を認識している人もいることでしょう。どんなに立派な企業に就職したからといって永遠に面倒を見てくれるわけではありませんし、満足する処遇を継続してもらえる保証もありません。だからこそ独立開業し、自分の人生の主導権を自分が保持したいと考えるのでしょう。

先日お話しした人は私と同年代。今の会社に大きな不満はないものの、このまま在籍してしまってよいのか悩んでいるそう。いわば「牙を抜かれた」状態で雇われる立場を続けてしまい、いざ独立開業しようと思った時には使いものにならない自分になっていないかと危惧しているそうです。まだ20代や30代前半であればそうした危機感も生じないのでしょうが、私たちのように明らかに社会人人生が後半に差し掛かると、「このまま食べていけるのだろうか」「このまま社会に必要とされ続けるだろうか」と不安になるのです。

資格や志を持っているのであれば、雇われるリスクを回避して独立開業するのも視野に入れるべき。自分で思うように働くことができますし、誰かに口うるさく管理されることもなくなります。何より、事業を「自分のもの」として育てることができるので誰かに追い出されることもなく、長く働くことが可能になります。もちろん、思い描いていたような利益を得られるかどうかは努力次第。毎年、廃業する士業が一定数いる中には、経営に苦労せざるを得なかった人も含まれることでしょう。

独立開業するということは、雇われるリスクと独立開業するリスクを比較して後者を取るということ。事務所を構えただけで何かが約束されるわけではありませんが、少なくとも自分の社会人人生を自分だけの判断で歩んでいくことが可能になります。

独自の立ち位置を確保する

独立開業した後に事務所経営を軌道に乗せるには、競合と同じことをしていては見込客に価格や距離で比較されるだけで、思うように利益を増やすことは困難。そこで独自の立ち位置を築くことで、見込客から積極的に選んでもらえるようになります。

多くの競合と同じことをするのは心理的に安心です。「みんなが給与計算を受託しているから」「みんなが労務の顧問契約を締結しようとしているから」と自分で深く考えずに経営の方向性を定めることができるからです。でも、その方向性は正しいものなのか。競合の多くが必ずしも将来に向かって正しい経営判断を下しているとは断言できないわけで、自分の人生に責任を持てるのは自分だけのはず。安易に誰かに流されずに、時に一人ぼっちになったとしても道を突き進んでいく覚悟が必要です。

独自の立ち位置を築くと競合からは奇異の目で見られます。当たり前です、「独自の」立ち位置なのですから。例えば私は社会保険労務士の屋号を掲げていますが、多くの同業者と同じような業務は手掛けていません。そう伝えると変な目で見られることにはすっかり慣れてしまいました。でも、いいのです。自分の顧客が満足してくれていて、かつ満足な報酬を支払ってくれていれば誰かに何かを言われてもまったく気になりません。

独立開業したあと、あわてて競合を追いかける前に、自分が築くことのできる「独自の立ち位置」について検討してみてください。

中華料理屋の「のれん」

独立開業とは「のれん」を掲げること

「自分のもの」を持つ

独立開業する理由は人それぞれでしょうが、「自分のもの」を持ちたいからというのも立派な理由になります。経営者として事業を好きなように育て、最後に売却したり廃業したりするのもオーナーだからこそ決断できることです。自分が育てた事業は自分だけのもの。株式を第三者に持ってもらっていたりしなければ、文字通りの所有者となります。

ある映画を観ていた時に、主人公がそれまで勤めていた工場をオーナーから買収しようとする場面がありました。理由を問うオーナーに対し、「自分のものを持ちたいから」と答える主人公。中小企業経営と何の関係もないアクション映画で、私にとってはこの場面だけが印象に残っています。

社会人人生を歩んでいると、自分の生きる場所を確保するための試行錯誤を迫られ続けます。雇われるだけが人生ではありませんし、また他の人と同じことをするのが独立開業ではありません。自分で自分の人生の主導権を握りたいものです。


メルマガ詳細


ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています

amazon musicのバナー

Listen on Apple Podcasts

関連記事

TOP