創業支援で使う言葉
私が創業支援に携わるときに、よく口にするフレーズがあるので紹介してみます。
「やりたいことがあるだけ幸せ」
せっかく創業の相談にいらしていただいたのに、自信がなさそうな方とお話しすることがあります。自信がないからこそ、私のような第三者に構想などを話して聞かせて、自分が進もうとしている道を確かめているのかもしれません。そうした方には「やりたいことがあるだけ幸せですよ」とお伝えしているようにしています。世の中には人生をかけてでも成し遂げたいなにかを見つけられない人が大勢いるわけで、やりたいことがあるというのはそれだけで幸せなことだと思うのです。
先日、同年代の人とお話しした時のことです。残りの社会人人生を考えた時に「何か」をしたいとは強く思うのだけれど、その何かがなかなか見つからないと言っていました。ほとんどの人がそうなのです。何かが見つからなくて、でも日々生きていかなくてはならず、さらには働いて生活の糧を得ていかなければならず悩んでいるのです。
「やりたいことがあるだけ幸せですよ」と伝えると、皆さん、顔をぱっと明るくしてくれます。まだ何者でもなかったとしても、現状が幸せであると指摘されるとそれだけで前向きな気分になってくれるのです。そこからは創業の具体的な相談が始まることがほとんど。私が知恵やアイデアを提供し、夢の実現をお手伝いさせてもらうことになります。
「行動しない人が99%」
創業に関する相談にいらしても、夢を語るだけでいつまでも具体的に動き出そうとしない人がいます。お金を理由にしたり、目の前にある仕事を言い訳にしたりして、一歩を踏み出そうとせずに何回も相談だけに足を運ぶのです。そうした人には「世の中の99%の人が行動しない。行動するだけでまずは成功」とお伝えするようにしています。
世の中のほとんどの人は(私も含めて)、文句を言ったり、あこがれを口にしたりするだけで具体的に行動することはありません。一歩を踏み出す勇気を持っていないのです。でも逆から見れば、一歩を踏み出すことさえできれば、その他大勢の見ていない景色を目にすることができます。行動する勇気を持てるかどうかが、創業の最初のハードルでもあります。
別のタイプの行動しない人も存在します。地に足がついていない、夢らしきものを語るばかりで泥臭い創業の現実から目をそらしているタイプです。カタカナ語ばかりを使うような人や、ピッチイベントへの登壇ばかりに注力している人、補助金をもらおうとばかり考えている人にこの手のタイプが多いように感じています。創業とは事業を通じて自分の夢を実現すること。事業を進めていく覚悟を持たずに、ふわっとした創業の派手な部分だけを身にまといたいのでしょう。私はこうした人々に関わることはありません。時間の無駄です。
「私は創業したことはありません」
創業しようとしている人を尊敬しています。なぜなら私は創業したことがないから。個人事業主ではありますが、資格を取って登録しているだけのことで、事業を興そうとしている人々とはレベルが違います。人生をかけて夢を実現しようとしている人々とお話ししていると、眩しくて、そしてうらやましく感じます。
創業の相談を受けている時に「先生」などと呼ばれたときには困ってしまいます。「私は創業したことはありません」とお伝えすることで、尊敬の念を持っていることをお伝えしています。
年下の創業希望者というだけで、えらそうな話し方をする専門家らしき人を何人も見てきました。足を組んで椅子に座っていたり、初対面なのに上から目線で話したり。さらには創業計画の欠点ばかりを指摘したり。彼ら彼女らのうち何人が、実際に自ら創業したことがあるのでしょうか。
創業して思い描いていたような成功を収めることができるのは、ごく一部の人だけです。成功した派手な事例ばかりが目につきますが、実際には多くの人が涙を流しています。そんな残酷な実態があるにもかかわらず、何かを成そうと挑戦する人には敬意を持って接するべきだと思うのです。創業しようとしている人に媚びる必要はまったくありませんが、自分がしたことのない創業に挑戦しようとしていることに対して敬意を表すようにしています。
ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています
関連記事