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コラム

みんなアドバイスを聞きに来るけど、それを実行する人は少ない

「みんなアドバイスを聞きに来るけど、それを実行する人は少ない」
2024/9/1 日本経済新聞19面 ファーストリテイリング柳井氏の言葉

中小企業支援のジレンマ

ある経営者と話していたときのことです。業績がおもわしくないとのことで、私と話して何かヒントを得たいとのことでした。しかし、お話ししていていくつか取り組めることが見えてきたので提案しても、「できない理由」ばかりを並べ立てます。取引先からクレームが入るかもしれないとか、うちの従業員では実現できないだろうとか、上手に言い訳をするのです。私から押し掛けたわけではなく経営者の方から出向いてきたのに、せっかくの提案を参考にするつもりはどうやらなさそうでした。

人は見たいと思う現実しか見ようとしない生き物です。その経営者もおそらく、私から何かヒントを得たいとは言ってはいたものの、心の中では自分を認めてもらいたいだけだったのかもしれません。「あなたはよくやっています、現状がおもわしくないのは経営者のせいではありません」とでも言ってもらいたかったのでしょう。

その後その経営者と話した事はありませんが、どうやら会社の混乱は続いている様子。売り上げは下がり続け、従業員の退職も続いていると聞いています。

経営をしていると見たくもない現実が次から次へと迫ってくるものですが、そこから逃げずに、不確実な未来に向けて、より良いと思われる経営の選択肢を選び続けた者だけが成果を得られます。思考を止めたらそこで終わりで、行動し続けることで未来が拓かれます。

そもそも人間なんて欠点だらけ

ある大企業OBの専門家(らしき人)が「あの経営者は俺の言うことを聞かないからうまくいかないんだ」と話しているのを聞いたことがあります。ではその専門家の言う通りに経営をしていれば、会社をトヨタやユニクロのように成長させることができるのでしょうか。おそらくそんなことが実現する確率はほとんどゼロに等しくて、専門家を頼ったからといってそれだけで成功が約束されるわけではありません。

中小企業支援に携わる人間が心しておかなければならないのは、よくも悪くも、結果の責任を取るのは経営者ただ1人であるということです。つまり、経営者が納得さえしていれば、どんな経営判断を下そうが経営者の自由です。経営権を持っていない外部の人間が、経営者が最終的に下した判断についてとやかく言うべきではありません。

中小企業支援に携わっていると、経営者の欠点ばかりを探すような専門家を見かけることがありますが、そもそも人間なんて欠点だらけなのです。間違っていても良いから経営判断を下し、生じた結果の責任を引き受けるのが経営者の役割です。

パソコンと電卓で仕事をしているビジネスパーソン

みんなアドバイスを聞きに来るけど、それを実行する人は少ない

泥臭い経営の現場でまたヒリヒリする時間を過ごしたい

私は売り上げを増やしたいと相談を受けた時、多くの事業者に情報発信をするように促します。知ってもらう努力をせずに、何かを買ってもらおうとばかり気が急いている事業者があまりにも多いのです。消費者に何かを売りつけようとする前に、まずは自分が何者なのか、何を考えているのかを自己開示してもらいたいのです。

ところがそうして情報発信するように促しても、実際に行動するのはごく一部。また、せっかく事業者が情報発信を始めても、継続できるとなるとさらに少数に減ってしまいます。せっかく経営相談にいらしたのに具体的な行動に踏み出すことなく、昨日までと同じ当たり前の日々を過ごそうとする経営者が多いのです。

今日の日本経済新聞にファーストリテイリングの柳井さんの言葉が紹介されていました。「みんなアドバイスを聞きに来るけど、それを実行する人は少ない」というもの。私が中小企業支援家として活動していて感じることと同じです。誤解のないように説明すると、アドバイスを生かさない経営者がけしからんなどと考えているのではなくて、そもそも経営者とはそんな生き物なのです。

私はいつかまた経営の現場に戻りたいと考えています。中小企業支援だけに携わり続けるつもりはなくて、中小企業支援の仕事を続けるためにも経営の現場に戻りたいのです。無闇にカタカナ語ばかりを使い、教科書に書いてあるようなことばかりを押し付けようとする専門家(らしき人)になってしまったら終わり。泥臭い経営の現場でまたヒリヒリする時間を過ごし、いつまでもお役に立てる中小企業支援家でありたいと願っています。


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