これはダメだなと思う経営者の特徴
惜しいところで成長のきっかけを掴み損ねる経営者を多く見てきました。
勝負を避ける
事業を営んでいると、攻勢に転じる絶好のタイミングというものが突然やってきます。特定の事業分野に注力したり、投資をして研究開発を一気に進めたり、これまでの投資を回収すべく営業を強化したりするといったタイミングがやってくるのです。ところが、経営者によってはこうした勝負所を見極められず、事業を成長させる絶好の機会をみすみす見逃してしまう人がいます。
中小企業支援家は社外から経営者に知恵とアイデアを提供するのが仕事です。社外にいるからこそ、俯瞰して事業全体を見渡すことが可能。だからこそ、経営者のもったいない行動もはっきりと目についてしまいます。そうした時にはもちろん、経営者に行動を促します。それと気付いてあわてる人もいれば、ピンと来てくれずに一歩を踏み出さない人もいて、こればかりは経営判断なので後は見守るだけです。
ある経営者には再三、事業を成長分野に絞るようにアドバイスしていましたが、目先の売上に目がくらんで風呂敷を拡げ続けていました。将来性のある事業分野を伸ばそうとすると当面は研究開発に注力せざるを得ず、売上が途絶えてしまうのが怖かったのでしょう。でも私からしたら、風呂敷を拡げて得られる売上の額なんて大したことはありません。そんな小銭に目がくらんで、絶好の成長の機会を逃しているのが理解できませんでした。そうこうしているうちに、競合が現れてしまいチャンスを掴み損ねることに。逃した魚は大きく見えたものです。
営業しない
ドブ板営業をしようとせずに、「営業の仕方がわからない」「大企業の担当者を紹介して欲しい」と言い続ける経営者がなんと多いことか。自ら行動しようとしない会社に未来はありません。
自社の製品・サービスは誰かの困りごとを解決するものであるはず。その魅力を自分で伝えようとしないのはまったく理解できません。ある創業まもない会社の経営者は最初から代理店に営業を委託していました。当初は可能性を感じさせる報告ばかりが続いていましたが、ふと気付いたときにはまったく営業が進展していないことが明らかに。委託契約を解除するのに多大な手間がかかってしまい、「最初から自分で営業をするべきだった」と経営者はぼやいていました。
反対に、あるアイデア商品を開発した経営者は徹底して先回り営業を実施していました。これまでの人のつながりを最大限に生かし、日本中を飛び回って商品の魅力を訴え続けました。徹底した先回り営業の結果、受注の確約を得られた分だけを生産したので、もちろん初期ロットは完売。最初から計画通りの利益を手にすることができたそうです。
中小企業支援に携わっていて、「営業しましょう」あるいは「営業していますか」と口にするだけでイヤな顔をされることが多々あります。それだけ経営者にとっては耳の痛い話なのでしょう。営業なくして売上を作ることはできません。
従業員のせいにする
経営者の企業統治の姿勢は人それぞれです。自ら旗を振って先頭を走るタイプ、大きな方針だけ決めたら後は従業員に任せるタイプなど様々でしょう。
ある地方中小企業の経営者は、口だけは従業員の自主性を尊重しているように言っていましたが、実体はうまくいかない経営の責任を従業員になすりつけているだけでした。口ばかりが達者なので自分の立場を守ることには長けていましたが、そんな姿勢は従業員に見透かされていて小さな会社は崩壊寸前に。創業まもない会社で、経営者の器以上に会社は大きくならないというのを実証しているようなケースでした。
中小企業支援家として活動していると、「これはダメだな」と感じる経営者を見分けられるようになってしまいます。私自身も、かつて江戸時代から続く家業を投資ファンドに事業譲渡したような失敗経営者だからこそ、そうした経営者を見分けられるのかもしれません。
世の中には成功事例ばかりがあふれていますが、同じ数以上の失敗事例が発生しているはず。経営の現場にも当てはまることで、多くの経営者が思うように利益を生み出すことができずに苦労しています。その多くは経営者の資質に大きな要因があるように感じます。
ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています
関連記事