地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

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コラム

賃上げ圧力が高まっているときに経営者に求められること

東京の最低賃金が10月から1,163円になるそうです。賃上げ圧力が高まり、一方で人手の確保も困難な状況下で経営者はどうすればよいのでしょうか。

従業員からの賃上げ要請の前に対応する

東京都の最低賃金が10月から1,163円に上がるそうです。中小企業の人件費負担は増加する一方で、人手の確保もままなりません。経営者はどのように対処していけば良いのでしょうか。

以前にある顧問先の経営者から、賃上げ要求を突き付けられていると相談を受けたことがあります。小規模な会社で、管理職も含めた従業員が一致団結して経営者に要請しているとのこと。幸い、外部の人が関わっている形跡などはなく、単純に賃上げを求めているだけとのことでした。この話を聞いた時、私は率直に言って「後手に回ってしまったな」と感じました。

物価が上がり賃上げ圧力も高まる中、賃金を現状のまま維持するという選択肢はあり得ません。どうせ上げなければいけないのであれば、従業員から声が出る前に経営者は対処すべきでした。従業員から声が上がってしまった時点で、内容はともかく、会社側が後手に回っているのです。

後手に回ってしまったことはもはやどうにもなりません。この会社の経営者にアドバイスしたのは、従業員の希望額をほんの少しでもいいから上回る回答をするということです。もちろん経営状況が許せばの話ではありますが、従業員が具体的な希望額を出してしまった以上、それを下回る回答をすれば賃上げをしたとしても不満が残ってしまうだけです。であるならば、1円でも上回る回答とすることで従業員の満足度を少しでも高める方が得策と考えたのです。

決算書を開示できるか

またさらに言うと、会社の財務の状況について従業員と共有できていれば、賃金だけが取り上げられることもなかったはず。日ごろから情報共有し、さらには従業員の数字に関する感性を養っておけば賃上げだけをテーマにした要求がなされる事はなかったと思うのです。

家業の代表取締役を務めていた時、業績が窮境に陥っていく中で私は財務の状況を基本的に隠さずに全て開示していました。漠然とした不安を持たれて従業員の士気を落としたくなかったのと、満足な処遇をできない現状について無駄な不満を抱いて欲しくなかったのです。例えば「役員は過大な報酬を得ているらしい」とか、「創業家にはお金が残る仕組みになっている」といった根拠の無い噂に振り回されずに、日々の業務に集中してもらうためにも情報開示は必須だと考えていました。

多くの地方中小企業の経営者が決算書を従業員に開示していないようです。以前はそれが当たり前でしたが、今後は経営に関する数字と指標はオープンにしていくのが望ましいと思います。少数精鋭で事業の目的を実現していかなければいけないのであれば、現在地を正確に把握するための材料を提供するのは経営者の義務です。

作業服の上に置かれた給料袋

賃上げは避けられません。後手に回らないように対応しましょう。

省人化に注力する

賃上げ圧力が高まり人手不足が続く中で、経営者は徹底した省人化に取り組んでいくべきです。DXというと高度なことを想像してしまいがちですが、日々のちょっとした業務を改善していくことで省人化は実現できます。

地方中小企業に関わっていると今でもファックスで顧客とやりとりをしていたり、注文書を発送伝票に手打ちで入力し直していたりする事業所を多く見かけます。以前であればともかく、現在であればITで解決できることがほとんど。経営者が不勉強であるために、過去からのやり方を当たり前のように続けているのです。

こうした現状に疑問を感じて積極的に改善の手を打とうとする従業員はごくわずかです。ほとんどの従業員は昨日の仕事を今日も当たり前に繰り返すだけです。誤解がないように言っておくと、これは従業員が悪いのではなく経営改善を目指さない経営者が悪いのです。

昨日までの当たり前をそのまま放置せずに、ITで省人化を目指そうと旗を振ることができるのは経営者だけ。私も家業の代表取締役を務めていたときに、それまで手書きの伝票で取り扱っていた経費精算をシステム導入により省人化した経験があります。もちろん実務は担当者が行ってくれましたが、最初の一声は経営者が上げなければいけません。まず経営者が動きましょう。


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