逃げるが勝ちの時もある
社会人人生を歩んでいると、必ずしも何かに向き合うばかりでなく、時には逃げるべき時も発生します。逃げるが勝ちの時もあるのです。
ハラスメントを受けた時
自分の心身に害を加えられそうになった時は、迷わず逃げなくてはなりません。いずれ対峙するにしても、まずは身を守らなければ傷ついてしまうだけです。
会社や上司からハラスメントを受けた時、人は仕事を失いたくないなどと考えて我慢してしまいがちです。現状維持バイアスと呼ばれる思考に陥ってしまうのです。でも冷静に考えて、そんな会社や仕事に人生を託して良いのでしょうか。心身をすり減らしてまで取り組むべき仕事など存在しません(一定の負荷は必要だとは思います)。
冷静な判断ができない時点で心を病んでいる可能性が高いです。またハラスメントをする組織や人物は、そうした相手の弱みにつけ込んできます。さらなる業務を押しつけてきたり、理不尽な要求をしてきたり。相手が言いなりになると見たら、さらに襲いかかってくるものなのです。ハラスメントを受けたのであれば、まずは距離をとって自分の体調を整えて反撃の時を待ちましょう。
反撃する際には物証が必要です。メモ、録音などを手元に用意しなくてはなりません。余裕があればこれらの材料を集めることができるでしょう。残念ながら主張を裏付ける材料を用意できないのであれば、戦うのは困難。悔しいかもしれませんが時間と費用を無駄にしないためにも、次のステージに目を向けましょう。
コンプライアンス違反を察知した時
組織や人に重大なコンプライアンス違反を認めたときは管理者や責任者でない限り、関わってはいけません。適切な距離を取らないと、思わぬトラブルに巻き込まれてしまうことになります。「この件は法令に違反している可能性が高いので、違法性が無いことを確認してください」「この件は管理監督者が自ら手掛けてください」などと突っぱねてしまいましょう。
逆に言えば、管理者や責任者はコンプライアンス違反を一切許容してはならず、是正する責任を負っています。例えば取締役には会社法と民法で善管注意義務を課されています。経営に携わる地位だからこそ、トラブルや難局から逃げずに従業員を正しい方向へ導く責任があります。顧問先の取締役とお話ししていると、これらの義務を理解している人は少ないように感じます。取締役になったからには、会社法を通読しておくべきでしょう。
また、取締役は最後の1人になっても事業を運営する責任を負っています。雇われる立場から出世していき最後にたどり着いたポジションが取締役であると単なる役職の最高位と勘違いしてしまいがちですが、法的にも道義的にも重大な責任を負っているのです。
話は逸れますが、中小企業支援に携わっている私に相談にいらした企業などが胡散臭いと感じた場合は、迷わず距離を取らせてもらいます。そうした企業や経営者に関わってしまうと私の信用に関わるからです。ある企業はそれらしい技術を保有していることをほのめかし、多くの専門家などから将来性があると評価されていました。でも私からしたら、事業の実態が定かではありませんでした。関わらない方が良いと考え、顧問契約はきっぱりお断りしました。そもそもの事業性を冷静に評価すれば、胡散臭い輩に取り憑かれることを抑止することができます。
搾取されそうになった時
私のように個人事業主を営んでいると、時に情報や知識を横取りしようとする人が現れます。こうした何かを搾取しようとする人は必ずしも悪意ある人ばかりではありませんが、関わってしまうと損をするのはこちらです。関わらずにさっさと逃げてしまいましょう。
私もある時期、将来は経営者を任せたいなどとほのめかされて搾取されてしまったことがあります。先方に悪意があったとは思いたくありませんが、飲み食いさえさせておけば文句は無いだろうという姿勢。搾取されていることに気づいてからは一切連絡を断っています。あのままズルズルと関係を続けていても、ただ働きをいつまでも強いられていたことでしょう。
士業等のように無形のサービスを提供している事業者は、「少し⚪︎⚪︎について教えて欲しい」などと迫られがちです。そうした人々は知識や情報に対価が発生するという意識に乏しく、関わるだけ損です。何より、無償対応してしまうと正当な対価を支払ってくれている顧問先に申し訳ないことになってしまいます。悪意があろうがなかろうが、搾取しようとする人とは断固として距離を取ることが必要です。
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